第51話

「心配かけてすんまそん」

「ふざけてんの?」

樹の冷たい視線が向けられた。


「あ、いえ、すみません」

彼女の纏う黒いオーラに姿勢を正して即謝る。


「それより、キングに何もされてないでしょうね」

目覚めたらキングの家にいたとだけは伝えてる。

同じベッドで抱き締められて寝てた事は、樹が怖くて言えてないけど。



「あ、うん。それは大丈夫。起きたら着の身着のままだったし」

「ならいいけど。歩く下半身みたいな男なんだから気をつけなさいよね」

ククク、相変わらず辛辣だな。

歩く下半身って、あまりにも的確な言い回しに笑いが漏れた。


「キングにそんな事言うの樹ぐらいだよ」

「瞳依を守る為だったら、キングとでも戦うわよ」

こんな風に言ってくれる樹が大好きだ。


高校の頃から、いつも側にいて支えてくれた樹。

何度も鈍臭い私を守って励ましてくれた樹に助けられてきた。

彼女が居なかったら、きっと父親の事を今でも吹っ切れてなかったと思う。


「いつもありがとうね。樹には色々と感謝してる」

「な、何よ、改まって」

照れ臭そうにそっぽを向いた彼女はツンデレだ。


「何となく言いたくなっただけ」

「変な子ね。それよりほら、野菜ジュース買ってきたから飲んどきなさいよ。ビタミンしっかり取って体調戻しなさい」

コンビニ袋から取り出した数本の野菜ジュースをテーブルに並べた樹。

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