第49話

「ふふふ、瞳依ちゃん、切れ味抜群のいいツッコミだよ」

本当に楽しそうに笑うから、まぁもう少しだけこのくだりに付き合ってあげてもいいかな?


「突っ込まずには居られません」

「うん、いいね。ところで、お腹空かない? お昼を食べて帰ろ。家まで送るし」

「えっ? いきま···」

断ろうとした私のお腹がグウっと鳴った。

タイミング悪すぎる。

...昨日の夜から何と食べてないんだから、そりゃお腹減るよ。


「ランチ行こ。着替えてくるから、ちょっと待ってて」

笑いを噛み殺したキングはそう言うと、ウォークインクロゼットらしき扉の中へと消えていった。


うわ〜恥ずかしい。

20歳にもなって、マンガみたいなタイミングでお腹鳴るとかどういう事。

恥ずかしさで赤くなった頬は熱い。


お言葉に甘えてランチを頂くしかないわ。

このままじゃ自宅までお腹が持ってくれそうにないしね。


キングとランチなんて、いいのかなと思うけど、昨日の迷惑料に奢ってもらっとこ。

そしたらキングにも、もう気にしなくても良いって言えるしね。



少しして、スーツに着替えたキングが、私のスーツのジャケットを持って戻ってきた。


「上だけでもシワにならないようにかけといたからね。流石にスーツのパンツを脱がしたら瞳依ちゃんにキレられそうだから、そのまま寝かしたんだ」 

ごめんねと言われて、

「こちらこそ、色々気を使わせてすみません」

そう返した。

キングなりに、私の為に色々考えてくれたらしいし、本当に感謝しなきゃだね。


「いいよ。俺が好きでやった事だし。はい上着」

「ありがとうございます」

「では、お嬢様、参りましょうか」

と、何故か胸元に手を当ててお辞儀したキング。


「へっ?」

咄嗟の事に反応出来なかった。


「えぇ〜今の俺、執事っぽく無かった?」

残念そうに眉を下げたキングに、あ!っと思い出す。

なるほど、そういうことね。アニメのドラマ化されたやつだ。

ト○ロばっかりに気を取られてて、そこは忘れてた。


「うちの父親はサラリーマンですよ。執事なんて雇うような家柄じゃないです」

「君だけの執事になりたい」

「あ〜はいはい。突っ込むタイミングの掴めない話には乗れません。ごめんなさい」

頭を下げて素直に誤った。


「ちぇっ、同じ瞳依ちゃんだからイジれるかと思ったのにな」

そんな事で拗ねられても知りませんよ。


この人は、私を一体なんだと思ってるんだろうか。

一先ず上着を羽織って歩き出す。

キングに付き合ってたらいつまで経っても帰れそうにないもんね。

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