第47話
「あ〜あ、瞳依ちゃんは上手く捕獲できそうに無いな」
キングは残念そうに言うものの、嬉しくて堪らないと笑う子供の様な笑みを浮かべてる。
「そう簡単に捕獲されませんよ。て言うか、キングは、どうして上半身裸なんですかね?」
露骨に嫌そうな顔でキングを見据える。
「あ、俺、自宅じゃ裸族だからね」
だからね、じゃねぇわ。
何が、裸族よ。
他人がいる時ぐらい服着てくださいよ、と思いつつも一つの思考に辿り着く。
まさか、羽布団で隠れた下半身も裸とか言わないよね。
「ま、ま、まさか···」
ゆっくり足元へ移動させ、ワナワナと口元を震わせる。
「いやん、エッチ」
なんておどけながら羽布団を片手で抑えたキングに白けた目を向けた。
「···」
もうこの際、上司だとか、街を統べるキングだとか関係ない。
この軽い男をどうしてくれようか。
「そんな軽蔑した目で見ないでよ、瞳依ちゃん。流石にスエット履いてるよ」
ね? と羽布団を捲って見せてくれた下半身は黒いスエットで覆われてた。
はぁ···大袈裟なぐらい肩で息をつく。
もう、なんだか、ドッと疲れた。
さっきから頭もガンガンと痛むし、早いとこお暇した方が良さそうだ。
もちろん、元々長居なんてするつもり無いけど。
「あぁ〜!」
長居とかお暇とか言ってる場合じゃなくて、私、仕事。
昼近くを知らせてくれる太陽の光に我に返る。
「どうしたの?」
私の突然の叫び声に、流石のキングも目を丸めてる。
「どうしたのじゃなくて、私、仕事遅刻ですよ!」
慌てて立ち上がろうとするも、起きて間もない身体はぐらりとふらついた。
「おっと、危ない。心配しなくても今日は休みでいいから。昨日の事は俺のせいだしね。ゆっくり休養していいからね」
私の腕を掴んで支えてくれたキングは、肩を竦め笑った。
「あ、そうなんですね」
キングの言葉がストンとハマると焦りは掻き消えた。
まぁ、そう言ってくれるなら休むし。
昨日の事は、確かに間違いなくとばっちりだしね。
「そうそう。だから、今日は俺とまったりと過ごそうよ」
当然の様にそう言って口角を上げたキングに、
「いえいえ、キングは昼から出社してください。私は自宅でまったりします」
力強く告げた。
キングとまったりと過ごす意味がまったく分からないよ。
昨日の事に責任を感じてるからかも知れないけど、正直キングだけのせいとも言い切れない事件だしね。
あれは、あの女性の完全なる暴走にしか過ぎないもん。
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