第46話
「仕方がないなぁ」
残念そうな顔をしながら私を解放したキングに、眉根を寄せる。
この人は女と見れば、見境ないのかな。
普段、美人なお姉さん達ばっかり相手にしてるんだから、私みたいなちんちくりんなんて興味ないはずなのにね。
「これはどういった状況でしょうか···うぅ」
頭痛い。
割れるようなこの痛みは、間違いなく二日酔い。
とにかく起き上がりその場に正座した。
飲んだ後に、あんな無茶な走り方をしたから、かな?
「まぁ、見たままだよね」
上半身を少し起こし片腕で頭を支えウインクし微笑んだキングには、昨夜見た面影はない。
その事にホッとしつつも話を進める。
「じゃあ、質問を変えます。ここはどちらで、私はどうしてキングと同じベッドに寝てるんですか?」
ふかふかのキングサイズのベッド上から、部屋を見渡した。
白と青で統一されたお洒落な部屋は見覚えのない場所だ。
大きな窓ガラスから差し込む光は、かなり太陽が高くなっている事を知らせている。
「ここは俺の部屋で。意識を失った瞳依ちゃんを連れて帰ってきたんだよ」
勝手に連れて帰るのは、出来れば止めて欲しかったよ。
キングの部屋と言われれば、そんな雰囲気の部屋だと思う。
キングのお目付け役の三村さんは、いったい何をしてたのか。
意識を失った自分のタイミングの悪さに肩を落とす。
せめて、自宅に帰り着くまで保てなかったのかと。
「ベッドじゃなくて、あのソファーにでも転がしておいてくれれば良かったんですよ」
広い部屋の奥にある私ぐらいなら、寝る事が出来そうなソファーへと目を向けた。
「女の子をソファーに寝かせるなんてするわけ無いじゃん」
そんな楽しそうに笑わないでほしい。
「いえ、むしろ床に寝転がしててくれても良かったぐらいです」
そうすれば、あんなに驚かずに済んだし。
キングに抱きしめられながら眠ってたとか、恥ずかしすぎるでしょ。
「瞳依ちゃん、抱き心地良かったから結果オーライだよね」
「誤解を生むような言い方は止めてくださいよ」
ベッドで抱き締められてただけなのに。
「じゃあ、誤解じゃないように実践しちゃう?」
妖艶に笑みを浮かべたキングの瞳が、獲物を狙う獰猛な猛禽類のそれと同じに細められた瞬間、背中にぞわぞわした何かが走った。
頭の中で危険信号が点滅する。
「嫌ですよ。私じゃなくても沢山相手がいますよね」
動揺してる事を悟られないように、平静を装って淡々と言い返す。
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