第41話

「今頃慌てても遅いけどね。亮矢、右の1人を頼むね」

キングはそう言い駆け出すと、目の前の男に強烈な回し蹴りを食らわせた。


「ぐぅぁ」

かなり痛そうに顔を歪めて吹き飛ぶ男。

それを見て、側にいた男は逃げ出そうとしたが間に合わずに、強烈なパンチをボディに打ち込まれた。


強い、この人、半端なく強い。


「うぐっ」

喉を詰まらせるような声を上げ体を折り曲げ苦しむ男の背中に、組んだ両手を叩き付けたキング。

容赦ないなぁ。


キングの隣で男を一撃で気絶させた西川さんの活躍がかなり霞んでしまった。

彼だって相当凄いとはずなのに。


「なあ、誰のモノに手を出したか分かってんのか」

キングの殺気が周囲を震撼させる。

背を丸めたまま地面に伏す男に容赦なく蹴りを入れるキング。


あの人は誰だろう?

私の知ってるキングは、あんな冷たい目をしてない。


「だ、だすげでぐれ」

蹴りを食らったせいで折れ曲がった鼻を押え、懇願する男の横っ面を蹴り飛ばすキングは容赦無い。


「謝って許されるのは小学生のうちだけなんじゃねぇの。俺の逆鱗に触れておいて、簡単に許してもらえると思ってないよな」

口調も雰囲気も、普段と違うキングに鳥肌が立った。


私の野生の本能が、目の前の男が危険だと告げてる。

ピリピリと肌に感じる何かに自分の腕を擦った。


「うわぁ~」

最後の1人がやぶれかぶれになって懐からナイフを取り出し、キングに向かって飛び出す。


「危ない!」

咄嗟に出た声。


「心配はありませんよ」

三村さんは冷静なままだ。


でも、本当に彼の言うとおりだった。

キングは男の突き出したナイフをすんでの所で避けて交わした後、男の腕を掴んで蹴り上げた。

ゴキっだか、バキッだか、音がして、男は悲鳴を上げてその場に転がりのたうち回る。


「人に刃物を向けるって事は命を取られる覚悟をしたって事だよな。だったら死ね」

荒々しい目付きで男を見下ろしたキングは、なんの迷いも無く男の頭を蹴り飛ばした。

白目を向いて動かなくなった男。

カタカタ震えて立ち竦む女性以外の敵は一瞬のうちに殲滅された。


これがキング、この街を統べる男

キングの本質に初めて触れた気がした。

怖いからなのか、興奮してなのか分からないけど、手が微かに震える。


「あれがキングです」

「はい」

「嫌いにならないでくださいね。キングは孤独と戦う為に強くならざる負えなかったんです」

そう言った三村さんの顔がとても悲しげに見えた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る