第40話
「おっと、危ない。間に合って良かった」
聞き覚えのある軽い口調と、優しい腕が私の体を包み込んだ。
「き、キング」
背後で私を追いかけてた女性の震える声がした。
「···はぁはぁ···おっそ」
吐き出す様についた悪態。
「ごめんごめん。これでも飛ばして来たんだけどな」
クスッと笑ったキングに、心の底からホッとした。
「···光輝君を···早く助けて」
キングに体を預けたまま、背後を振り返る。
3人相手に未だ格闘する光輝君の姿がそこにあって、私を追い掛けてきた女性は顔を青ざめさせて途中で立ち止まっていた。
「了解。快斗、瞳依ちゃんをよろしくね」
近くに居たらしい三村さんに私をひょいと預けるキング。
ぬいぐるみか何かと勘違いしてるんじゃないか。
そんなひょいひょい渡されても困る。
「程々にお願いしますよ、キング」
私を受け取った三村さんは、私を横抱きにするとキングに苦言を呈す。
「分かってるって。亮矢行くよ」
「おう。いっちょやるか!」
キングは西川さんを引き連れ、男達の方へと向かって歩き出す。
その足取りは、不謹慎にも軽やかで。
あの人、本当、大丈夫なんだろうかと心配になった。
「市原さん大丈夫ですか?」
三村さんが心配そうに顔を覗き込んでくる。
この人のこんな顔珍しいかも。
「は、はい。キング···大丈夫なんですか?」
息を整えならがそう聞いた私に、
「ええ、見てれば分かりますよ」
三村さんは綺麗に微笑んだ。
うわぁ~かっこいい。
いつもこんな顔してたら、今より更にモテモテになるのになぁ。
眉間にシワを寄せて険しい顔してなきゃ、かなりいい男なのに。
「人の顔を見て失礼な事を考えてないで、キングを見ておいてください」
あ、心の中見透かされてる。
元の不機嫌な顔になった三村さんに促され、キングの方へと目を向けた。
立ち尽くす女性に一瞥をくれることなく進んだキングは、光輝君と対峙してる男達の前へと躍り出た。
「光輝、ご苦労さま。もう休んでいいよ」
「き、キングすみません」
光輝君は口元の血を手の甲で拭って後ろに下がる。
「覚悟は出来てるよね」
男たちに向かって微笑んだキングの周囲に、黒いオーラが滲み出た様な気がした。
「や、やべぇ」
「話と違う」
「キングは相手にしちゃ不味いだろ」
男達はキングを見て一斉に慌てだす。
その顔が青ざめてたことに、ざまぁみろって思った私の性格悪いのかもしれない。
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