第24話

「···分かりました」

やればいいんでしょう、やれば。

嫌々ブラックノートを受け取った。


「ブラックノートは機密書類に分類されますので取り扱いには十分に注意してください」

「はい」

三村さん相手に、乾いた返事をしてしまったのは、もうしょうが無い気がする。

何が機密書類だ。

遊び人の女の管理なんて、本当馬鹿馬鹿しい。


「裏予約の都合上、業務時間外の出勤も有りますがその時々に特別手当が支給されますのでご心配なく」

それ、別の意味で心配ですよ。


「手当くれるならがんばりますよ」

与えられた仕事なら仕方ないし。

契約書を書いた時点で、私はもう逃げらんないんだ労な。


腹を括って、割り切って仕事する。

あんまり深く考えてると頭痛くなりそうだ。


「市原さんが物分りの良い人で助かりました」

初めて見た三村さんの笑顔が、本当に胡散臭いと思ったことは内緒だ。


「瞳依ちゃ〜ん、明日からよろしくね」

ひらひらと手を振る憎たらしい斎賀さん。


「その呼び方止めてください」

森の妖精の出てくる某映画の妹ちゃんと同じ呼び方は、小学生の頃からされまくって、もう飽き飽きしてるから。


「ええ〜! 可愛いのに」

「煩いですよ」

「猫バス乗れるよ」

「乗らねぇわ!」

そう叫んだ私は悪くない。


こうして私はブラックノートを手に入れる運びとなったのだった。

このノートとの出会いが、私個人の周囲をも騒がせていくなんて、この時の私は思いもしなかった。

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