第23話

「書類の方は間違いありませんでしたので、採用とします。出勤は明日からで大丈夫ですか? 準備の時間や都合が悪ければ市原さんのご希望日を入社としますが」

「···明日からで大丈夫です」

どうせここで働かないといけないなら、早い方がいい。

特に用事もないしね。


「そうですか。では、明日の朝までに当社の制服を準備しておきます。サイズは何号ですか?」

「7号でお願いします」

受付にも制服があるらしい。


「うわぁ〜瞳依ちゃん、サイズ小さいね。胸はあるのに」

「どこ見てんですか!」

思わず胸元を両手で隠して、斎賀さんを睨みつける。


「社長、馬鹿なんですか」

三村さんが呆れ顔で斎賀さんを見て溜め息をついた。

「いや、だって、さっきから目立ってたし」

私の胸を見ながら話すんじゃない。

この人、本当に危険人物だ。


「職場で馬鹿は止めてくださいね。ところで、市原さん、こちらのノートをお渡ししておきます」

斎賀さんに向けてやれやれと首を左右に振った後、三村さんが一冊の黒いノートを私に差し出した。


「えっ? なんですか、これ」

「市原さんには通常業務と併用して、キングの専用受付をお願いします」

専用受付とはなんぞや?

子首を傾げて、三村さんを見る。


「簡単に言うと、キングの女性関係をそのノートで管理してもらいたいのです。次から次と湧いてきて、把握が大変なんです」

「は、はぁ」

「以前その受付の担当者が退職し困っていた所に、社長が貴女を見つけてきたと言う訳です」

「···」

どんだけ、遊び人だよ。

女の管理しなきゃいけないほどって。


「貴女の気持ちは痛いほどわかります。ですが裏予約の担当者は必要不可欠なのです。貴女のメインの仕事は裏予約の方だと理解していただいて構いません」

「···そうですか」

なんだそれ! 突っ込みそうになって自分を押し留めた。


「キングと遊びたい女性達の予約を効率よく分散し管理するのが市原さんのお仕事です。むしろ通常の受付はこちらの片手間で構いません」

だ、騙された。

本来の目的は、こっちか。

遊び相手の女の管理なんて、冗談じゃないわよぉ〜!


「裏予約の担当者の給料は、精神への負担を考慮して通常の受付業務の三割増になっています」

通りで給料高いと思ったよ。

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