第19話
斎賀さんに連れられてやって来たのは最上階の社長室。
重厚なドアの向こうには、冷ややかな目をした黒髪イケメンが居た。
目があった瞬間、ビクッとなったのは仕方ないと思う。
正面の大きな窓ガラスを背に黒いデスクがあり、左端の壁際には秘書用のデスクが置かれていた。
そこに座っていた男性が私達の到着に合わせ席を立つ。
「遅かったですね」
その言葉に嫌味が含まれていたのは間違いないだろう。
斎賀さんに腕を掴まれてる私を、ほぼ値踏みするように上から下まで視線を這わせた彼の切れ長な目に背筋がひやりとした。
「そう睨むなよ。瞳依ちゃんが怯えるだろ」
冷たいオーラを漂わせた彼にヘラりと笑える斎賀さんが凄い。
「その子が市原瞳依さんですか?」
「そっ。瞳依ちゃん、ここ座って」
軽く頷いた斎賀さんは、私を応接セットのソファーへと促してくれた。
どこか張り詰めた空気に冷や冷やしながらも、大人しくそれに従ったのは、黒髪のイケメンの醸し出す雰囲気が怖かったから。
「はぁ...まぁいいでしょう。社長室に珈琲を3つ頼みます」
やれやれと首を左右に振ったあと黒髪のイケメンは、内線を使って何処かに連絡を取る。
それから、デスクに置かれていた封筒を手にこちらへとやって来た。
対面に斎賀さんが座り、その隣に黒髪のイケメンが腰を下ろす。
今まで、味わったことの無い緊張に喉の奥が鳴った。
こんな面接死ぬ。
イケメンの2頭立てだよ。
何社か面接してきたけど、人事担当の人はそこそこ年齢のいったおじさんばっかりだったし、若いイケメンに面接されるのは初めてだ。
と言うか、イケメンの周りにはイケメンしか居ないのかな。
西川さんも可愛い感じのイケメンだったし、この黒髪の人も艶めかしい色気のあるイケメンだ。
目の前のイケメン指数に頭がくらりとした。
私だって綺麗な物は綺麗だと思えるもん。
でも、目の前の2人に恋と言う名の触手が全く動かないのは、彼らの醸し出す空気のせいだよね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます