第15話

三村さんの言った通り迎えは西川さんと言う人だった。


彼の運転する車に乗り込む。

あぁ、昨日歩道橋の上から見かけた高級車だ、これ。


黒い革張りのシートは座り心が抜群なのに、居心地が悪くて仕方ない。


車内を落ち着かない様でキョロキョロしてると、運転席に乗り込んだ西川さんに苦笑いされた。

笑ってる場合じゃないんですってば、本当にこれからどうなるのか不安なんですよ。


「改めて自己紹介するね。僕は西川亮矢にしかわりょうや、キングの運転手兼雑用係。よろしくね」

バックミラー越しに笑い掛けてくれた西川さんの口元には可愛い八重歯が覗いている。


斎賀さんとは違った可愛い雰囲気のイケメンで、ツーブロックにカットされた赤い髪がとても似合っていた。


「あんまりよろしくはしたくないんですけど、市原瞳依です」

本音を漏らしつつ自己紹介したら、何故か爆笑された。


「ハハハ、その気持ち分からなくは無いけど、きっと僕達は頻繁に合うことになると思うよ」

「嫌ですよ」

「キングに見つかったのが運のツキだと諦めた方がいい。同じ会社に勤める事になるんだし仲良くしようね」

多分逃してもらえないから、最後に囁くように言われた言葉は聞こえない振りをした。


これからどうなるのかと戦々恐々してる私に追い打ちをかけるの、本当止めて欲しい。


「私、どこに連れて行かれるんですか?」

滑るように走る車の窓から外へと視線を向ける。

繁華街の大通りを走ってるのは分かるけど、行き先は全く分からない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る