第12話

遠くに聞こえるスマホのメロディー。

私は眠い目を擦りながら、突っ伏してたテーブルから顔を上げた。


どうやら、テレビを見ながら眠ってたみたい。

点きっぱなしのテレビの音と、それを邪魔するように鳴り続けるスマホのメロディー。


なんだか嫌な予感がして、恐る恐る手を伸ばし着信相手を確認する。

ディスプレイに表示されてた名前にヒッと息を飲んだ。


「···そう言えば昨日、電話番号を無理やり交換させられたんだった」

大袈裟なほどに肩で息をつく。


今まで忘れてたお気楽な自分に引きつった笑いが漏れる。

ディスプレイには斎賀結翔の名前が消える事なく表示され続けてる。


早く諦めて切ってくれないかな。

願いを込めてディスプレイを見つめる。

さっきまでの眠気は完全に吹っ飛んだ。

鳴り続いたスマホは留守番電話に切り替わる。


「やった。これで諦めてくれるかも」

願い通りに鳴り止んだスマホに束の間の安堵をえた途端、再び着信音が鳴り出す。


本当に勘弁しください。

何度かけられても出ませんてば。

お願い諦めて、両手を合わせスマホに向かって拝む。


そんな願い虚しく、私のスマホは鳴っては止まり、鳴っては止まりを繰り返す。

充電がなくなるから、いい加減止めてほしい、と呑気な事を考える余裕はまだある。


だって、彼とは住んでる世界が違うから、本気で仕事に誘われるとも思えないし、それに女に不自由してないキングに狙われてるとも思わないもん。



何度か着信を繰り返したスマホは突然成りを潜めた。

お! そろそろ諦めたかなぁ。

早く私の事は忘れてくださいね。

よし、静かになったし珈琲でも飲もう。


立ち上がろうとした私の耳に届いたのはショートメールの短い着信音。

恐る恐るスマホを手に取ってタップすると、そこに現れたのは脅し文句。


[次の着信で出なかったら、自宅に迎えに行くね]

優しい口調の文章なのに、ゾッと背筋に寒気が走った。


自宅に迎えに来るって何?

私の家なんて・・・知らないよね。

まさか、名前だけで自宅まで調べたとか言うんだろうか。


「そんなバカな」

乾いた笑いを漏らしつつも、斎賀さんがこの街の支配者だと言う事を思い出す。


もしかしたら、正攻法じゃ無い抜け道を沢山知ってて、この街の事なら全て見通せるのかも知れない。

頭に浮かんだその予想に身悶えた。


それ無茶苦茶、怖いんですけど。

しかも、メリーさんみたいなメール、怖すぎるよ。

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