第11話
「あの人がキング?」
マジか? マジで?
いやいや、そりゃないでしょ。
『斎賀結翔って名乗った人が偽物じゃなきゃね。どんな容姿してたの?』
「うーん、容姿・・・えっと、茶髪で前髪長め、二重で甘いマスク」
『抽象的ね。他には無いの?』
そう言われて、昨日の事を思い浮かべる。
着てたスーツは青かったような。
それから・・・どんなだったっけ、やたらと色気のある人で、100人居たら100人がイケメンだと言いそうな人。
「・・・あ、指輪。そう! 左手の中指に銀色の王冠の形した指輪をしてた」
『それって飾りぼりみたいな指輪で、小さなオニキスが3つぐらいついてなかった?』
「うん、そうそう。お洒落なやつだったよ」
『瞳依、それ本物で間違いなさそうだわ』
「マジで?」
本物のキングなの、あの人。
そりゃ、困るよぉ。
『瞳依、あんた暫く出歩くの止めなさい』
「えっー! 無理だよ。昼から面接あるし」
『そんな焦って探さなくても蓄えはあるでしょ。いいから言う事聞いて家で大人しくしておくことね』
「どうしても?」
『どうしてもよ。とにかくキングから逃げたいなら家に籠もってなさい。私、そろそろ授業始まるから電話切るわ。放課後また連絡するから、良い子でいなさいよ』
「了解。勉強頑張ってね」
『ありがとう』
樹と通話を終えて、スマホをテーブルに置く。
面接、どうしよう。
小ぶりなテーブルの前に座ったまま両手で頭を抱える。
幻だと思い込んでたことは、どうやら本当にあったことらしく。
そのせいで、大切な面接に行くこともままならないなんて。
歩道橋の上で叫んでしまった自分が恨めしい。
あの場所に立ち止まったりしなきゃキングに会うことは無かったはすだもんね。
樹の言う通りにするしかないよね。
変に出歩いて、キングに再会するだなんて嫌だし。
女癖の悪い暴君とこれ以上関わるなんてごめんだよ。
「よし、引きこもるかぁー!」
モヤモヤ考えてても始まらないもん。
こう見えて、立ち直りと割り切りは早いんだよね、私って。
午後からの面接を予定してた会社に断りの電話を入れ、暫しの引きこもりになる事を決意するまでにそんなに時間を要することは無かったのだった。
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