第6話

「だって、千景がウザい」


「千景がウザいのは今に始まったことじゃねえ」


「海鈴も時雨も酷いなぁ」

と眉を下げた千景は、


「みんなが思ってる事だから」

真夏に一撃される。


「ま、本当の事だから仕方ないやん」

追従したのは皇紀。


「みんなの俺の扱いが・・・・酷いよ」

目元に手を当てて泣き真似する千景はみんなにスルーされた。



「ほんで、どうすんねん?女帝」

いきなり話を戻すのは止めてよね、皇紀。


「皇紀、その女帝って言うの止めて」

覚めた視線を向けた。

それでなくても、会う連中がそう呼ぶのに、親しい仲間にまでそんな呼ばれ方したくないわよ。


「そら、すまん。今日はご機嫌斜めやな?女の子の日ぃなん?」


「一言余計」

全く、この男はデリカリー無さすぎ。

私の周りにはロクなの居ないのか。


「皇紀、いい加減にしとけ。海鈴が拗ねると面倒だ」

そう言いきるのは時雨。

拗ねるってなにさ? 子供じゃあるまいし。


「話、戻そうぜ。東エリアが騒がしいんだ。その上、東の下っ腹連中がうちにちょっかいかけてきてるしな。西の威厳と力を保っとかないと舐められる」

真夏が真剣な顔付きで言う。

うちの情報担当の真夏、彼が言うのだから間違いないだろう。


「やっばり黒王が入れ替わるって噂は本当なのか?」

低い声で時雨が聞く。

黒王の入れ替わり・・・東は今の黒王のせいで荒れて来た。


昔から、他エリアへの無駄な干渉や攻撃を仕掛けてたが、ここ最近それが更に酷くなったんだ。

自分のエリアでも力を傘に着せ好き放題やっている大馬鹿者は、最近付き合いだした女にとち狂って意のままに操られてるって噂。


「ああ、信憑性は増してる。現黒王の反対勢力が力を蓄えてるらしい。だからこそ、現黒王が焦ってうちに粉をかけてきてんだろ。うちの力が欲しくてな」

身の程知らずも良いところだと付け足して、バカにしたように笑った真夏。


「へぇ、うちを攻め落としたいんだ」

ふざけんな、不適な笑みを浮かべた。

面倒ごとを仕掛けてくるなんて、うざったい奴だわ。


「うちは東ごときに負けねぇけど、女帝がエリアに姿を頻繁に見せる事で牽制した方が良いよな」

そう言ったのは千景。

珍しく真剣な表情だ。


「はぁ・・・邪魔くさい」

大きな溜め息をつく。

そう言いつつも、牽制の為の見回りが必要な事はきちんと理解してるつもりだけど。


「東の下克上が終わって落ち着くまでの辛抱だ」

よしよしと頭を撫でてくれた時雨に、小さく頷いた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る