第5話

「エリアの見回りを頻繁にした方が良い。俺様の美貌を振り撒くにも都合良いし」

と冗談混じりに言ったのは4神の一人、我妻千景(アズマチカゲ)


黒髪でアシンメトリーに分けられた前髪、狐目に黒渕眼鏡を掛けた彼はイケメンではあるが性格には少々・・・いや、かなり難ありだ

なにが、美貌だよと突っ込みたくなるのを我慢して溜め息を一つついた。



「千景の戯れ言は置き捨てて良いが、見回りを増やすのは賛成だな」

と言ってゆっくりと紫煙を吐き出したのは広瀬真夏(ヒロセマナツ)。

肩までの茶髪をドレッドヘアーにした切れ長で一重の美形、中肉中背の彼は見た目通りレゲエ好き。



「見回りなんて面倒だし、嫌よ」

と唇を尖らせる。


冗談じゃないわよ。

エリアに出たら、動物園の猿みたいにじろじろ見られてボソボソ囁かれるのよ?



「はい、出たわ。女帝の面倒臭がり」

苦笑いしたのは市ヶ谷皇紀(イチガヤコウキ)

金髪で前髪に三本の赤いメッシュを入れた強面で高身長。

だけど性格は見た目に反して関西弁を喋るお茶目さんだ。


って言うか、皇紀まで女帝って呼ぶな。


「エリアに出とかねぇと、他のエリアの奴らに漬け込まれる。面倒臭くてもやるしかねぇぞ」

憎々しげにそう吐き出したのは中平時雨(ナカダイラシグレ)。

青色に染めた髪、二重で鼻筋の通ったかなりのイケメンで180㎝ある身長とバランスの取れた筋肉の持ち主だ。

そんな彼が私に忠誠を立ててくれてるんだから不思議だ。


彼らは4神と呼ばれてる。

そして、かくゆう私は蒼の女帝なんて呼ばれ方をしてる。

もちろん、自らそんな呼び方を広めた訳じゃない。

私達はこのエリアで生まれ共に育ち、気の向くまに暮らしていただけ。


いつしか、誰かが囁き始めた。

それが広がり大きくなって、気がついたら呼び名として定着していた。


だいたい、女帝ってなんなのよ?

私、そんなにツンツンしてて偉そうかな?

一度広がった噂は止まる事も知らず、私は・・・いや、私達は西エリアのトップとして君臨する事になった。


「海鈴(カイリ)は、女帝の威厳を保とうとしようよ」


「そんなもの保ちたくないわよ。千景のバカ」


「バカは酷いなぁ」

唇と尖らせた千景を一瞥した。

見かけ倒しのエリートの癖に非情にウザい。


「海鈴、ここにシワ寄ってるぞ」

胡散臭そうに千景を見ていた私の眉間を人差し指で押した時雨。

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