第4話

今か今かと待ちわびる人達をぼんやりと見つめていると、背後で音がした。

なに?と振り返った私は大きく目を見開く事になった。


「ど・・・どうして・・なぜ・・・ここに」


掠れた小さな声は震えてた。

体がカタカタと小刻みに揺れる。

何かに支配されたかの様に反応する体に恐怖した。


小路を真っ直ぐにこちらへと向かって歩いてくる彼女とその周囲を守るように歩く四人の男の子。


蒼の女帝・・・彼女がそうだ。

蒼い瞳に綺麗な黒くて長い髪、誰もが見惚れてしまうであろう美しい彼女の姿。

キラキラと輝くオーラをまとっている。

孤高の存在に・・・無条件に平伏したくなる。

そんな彼女を守るように寄り添う4神だって美形な上に、半端ないオーラの持ち主だ。


もたれていた壁に更に吸い付かせるかの様に背中を押し付けた。

目の前をゆっくりと近付いてくる彼ら。

周囲の音が一切聞こえ無くなる。


彼らは別世界の住人だ。

憧れや尊敬を抱く事が出来ても、容易く声をかけようだなんて思えない。

噂通りの美しさに、噂通りの気高さを持つ。

彼女の醸し出す空気は支配者のそれだった。

壁に張り付いてる私の存在なんて気にする様子もなく彼女はゆっくりと歩みを進める。


だけど、前を通り過ぎる瞬間に彼女は私に一瞥をくれた。

蒼い瞳に射ぬかれた瞬間に息が止まった。

呼吸をしたいのに仕方を忘れたように酸素が取り込めなくて。

苦しさにクッと漏れた声、それが聞こえたのかどうかは分からないが彼女の蒼い瞳は興味を無くしたように離れていった。


そして、ゆったりと彼女達は私の目の前を通りすぎていく。

遠ざかっていく彼女達の足音だけが自棄に耳についた。


私の世界に呼吸と音が戻ってきたのは、彼女達が大通りに出た後。

ざわめきと賑わいと、歓喜を含んだ悲鳴があちらこちらで聞こえ始める。

人垣は突然現れた彼女達の為に、割れていく。

まるでモーゼの行進だ。

彼女も、また彼らも周囲に一瞥をくれる事もなく自分達の世界に居続ける。

掛けられる声に誰1人として反応しない。


「フフフ・・・ハハハ」

おかしくもないのに漏れ出た笑い。

まだ手が震えてる自分の両手を見下ろした。

西エリアの蒼の女帝、彼女は私が今まで見た誰よりも美しかった。

そして、それと同時にその気高さに恐怖した。


二度と彼女をあんな間近に感じる事は無いだろう。

そして、彼女が私と視線を合わせる事も二度と無いだろう。








ーendー

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