第3話
さっきまで大勢の人が行き来していて、賑わっていたはずのメインストリートは立ち止まった人達で溢れていた。
ざわざわとするその様子に首をかしげる。
何かあったの?
次第に出来上がっていく人垣。
ワクワクした様子の人達が今か?と何かを待ちわびていた。
あ・・・もしかしたら。
「ねぇ、2人の会いたがってる人達が来たんじゃないかな?」
妄想する事が忙しくて外の様子に気付いていない2人にそう告げる。
「えっ?」
「うそっ!」
私の言葉に目を丸めた2人は窓の外へと目を向けた。
もちろん彼女達に見えるのは人垣のみ。
「やだ、ここじゃ見えない」
「外行こう」
2人は鞄を手にして立ち上がる。
興奮気味の2人に肩を竦めて私も立ち上がった。
「さっちん、早く」
私を呼びながらも2人は大急ぎでファストフード店のドアを目指してる。
「これ、片付けてから行くから先に行っておいて」
2人が放置しているテーブルを見下ろした。
ゴミと溶けた氷だけになったカップをトレーに乗せて持ち上げる。
「ごめ~ん、さっちん」
「さっちん、ありがとう」
正面をむいたまま上半身だけ振り返って、両手を合わせて申し訳なさそうに謝る2人に苦笑いする。
「良いよ。早く行っておいで」
フフフと笑って私はゴミ箱を目指した。
遠ざかっていく2人の足音。
本気で会いたくて仕方ないんだなと、彼女達のミーハーさに笑いが漏れた。
彼女達だけじゃなくて、他の客達も騒がしくなっていく。
慌てて外へ向かう人達は真剣な表情をしていた。
そんなに見たいものなのかな。
男女関係なく、彼らを見ようと集まっていく人達に首をかしげる。
こんな事を思ってるから、皆から冷めてるとか言われるのかも知れないな。
自嘲的な笑みを口元に浮かべた。
片付けを終えて外に出れば、沢山の人だかりが出来ていた。
「こりゃ、あの子達と合流するのは無理だな」
大きく息をつく。
まぁ、あの人混みに突入する勇気は無いわ。
お目当ての人物の登場を今かと待ちわびる人達は、かなり興奮してるもよう。
押されて怪我でもしちゃ面倒だし、路肩に寄って待ってるかと考えて歩き出す。
大通りから少し小路に入って、建物の背を預ける。
ここからなら、人混み巻き込まれる事はないよね。
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