第7話

縄張り争いとか、権力争いとか、正直どうでも良い。

でも、生まれ育った地域を余所者に荒らされるのは嫌だ。

私達が育ってきた街を守りたいだけ。

蒼の女帝だとか祭り上げられた当初は辟易してたけどさ。

今となっては、仕方ないって諦めが半分、馴染みの地区を守りたい気持ちが半分だ。


「じゃあ、明日の夜からにしようか」

真夏の提案に、みんな静かに頷いた。


「ほな、今日は帰ろか」

ソファーから立ち上がる皇紀。


「明日も学校だしな」

両手を頭の後ろに当てた千景は面倒くさそうに溜め息をつく。


「面倒癖ぇな」

溜め息をついて前髪をかき揚げた時雨に、

「きちんと行かないと今年も留年するよ」

と苦笑いで肩を竦めた。


「うっせぇよ」

そっぽを向いた時雨は三回目の高校三年生をやってる。

一回目は成績が悪くて留年、二回目は出席日数が足りなかったのだ。


「早く大学に上がってこいよ、時雨」

千景に言われたら世話ない。


「お前だって三年二回やっただろうがよ」

呆れ顔でそう言ったのは時雨。


「どっちもどっちだと思うね。俺と同じ年なんだから、大学二年じゃないとおかしいんだからね」

肩を竦めたのは真夏。

彼の言うように、今年二十歳になる彼らは順当に進んでれば大学二年のはずなんだ。


「俺らはまだ高二でええもんな? 海鈴」

にかっと笑って私を見た皇紀。


「まぁね。一学期の期末テスト落とさなければね」

皇紀の中間テストの結果が悪かったのを知ってるから。


「あ、痛い所をついてくるなぁ」

ニシシと笑って後頭部をガシガシかいた皇紀。

この話で分かるように、時雨、千景、真夏の3人は二十歳。

私と皇紀は三つ下の17歳の年である。

年は違うものの、家が近くて小さい頃から一緒に遊んだ幼馴染みだ。

ちなみ、皇紀が関西弁を喋るのはおばさんの影響だ。


「とにかく帰ろ」

ソファーから立ち上がる。

掛け時計はもう夜中の12時を回ってるから、早く帰らなきゃ。

歩き出した私の隣にやって来たのは時雨。

ドアに近い皇紀と千景が先にドアへ向かうと、二枚扉を押し開けてくれた。

途端に店内の音楽と喧騒が辺りに広がった。

私達が今まで居たのはリヴァイアサンと言うクラブの二階にあるVIPルーム。

ここは私達のホームグラウンドだ。

薄暗い店内は高い天井に吊り下げられたミラーボールに照らされて光ってる。


そこでひしめき合うように、躍り狂う客たち。

平日のこんな時間なのに、みんな元気だと感心する。

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