第604話

桃李が、明日、一緒にいれないって言うから⋯。


桃李を睨んでいた目からぽた⋯と、涙がこぼれ落ちた時、「⋯⋯かな、こってだれ⋯?」と、その質問が口から出てきて⋯。


その名前を呼ぶことさえ嫌だった私は、ボロボロと涙がこぼれ落ちた。




〝かなこ〟という名前が私の口から出たことに驚いた顔をする彼は、「⋯何で想世が知ってる?」と、すごく、低い声を出した。


「どこで聞いた?」と、私を見下ろす桃李。

その顔は、すごく不機嫌そうだった。

二の腕を掴む力が強くなり、思わず顔を歪める。



「⋯っ、⋯さっき、話してたの⋯聞いた」


「誰に」


「⋯〜〜っ⋯、もういいでしょ⋯、桃李は私よりもその人が大事なんでしょ?」


「誰が言ってた?」


「私よりもその人を優先させたくせに!」


「想世、誰が言ってた?」


「その人には甘いんでしょ!?」


「誰が言ってた答えろ!!!」



突然、桃李が怒鳴り声を出すから。


びく、と、体が震えた私は、声を出すのをやめ⋯。



慌ててその人を見つめれば、もう一度その人は、今度は優しく「誰が言ってた?」と、二の腕を掴む力を緩めてくれて⋯。

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