第605話

びくびくと震える私は、「わ、からない⋯」と、「顔⋯おぼえて、ない⋯2人、いた」と、それを口にする。


桃李は険しい顔をしながら「⋯⋯殺す」と、つぶやき。


二の腕を掴む力を、少し、強めたその人は⋯。


じっと、私の目を見つめてきた。そして軽く考えるように息を出し。



「なんとなく、分かった。⋯俺が他の女と会うって思ったんだな?想世よりそいつを優先したから、俺がお前に嘘ついてるって思ったんだな?それで騙すとか言ってたわけだな?」



それに、恐る恐る、頷いた⋯。


桃李は軽くため息を出した後、「⋯⋯ちげぇよ」と、低く呟き、二の腕をはなし、私の真後ろにある壁に手をついた。


桃李と壁に挟まれている私は、なんの言い訳をされるんだろうと、ビクビクしながら聞いていた。



「そいつは俺の母親、女でもなんでもねぇよ」



どうしてそんな簡単な嘘をつくんだろう。

つい最近、お母さんを亡くした私に。



「⋯⋯うそ⋯、亡くなったって、言ってた」


「実の母親はもういねぇ、そいつは親父が再婚した血の繋がってねぇ母親だ」



再婚した⋯?

血の繋がりがない?



母親⋯。

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