冬の海

@karas_saibi

第1話

冬の海。太平洋側の此処には雪は積もる方が稀だろう。ただの潮の香り。

子供の頃夏はいつも此処で遊んだものだ。僕にとってずっと当たり前で特別だった場所。

この匂いも今となっては寂しさを心に満たすには充分な理由だ。

友と過ごした何気なく、今となっては幼さ溢れるイタズラをした事。悪戯じゃなくても気恥ずかしいモノで溢れている。初めて好きな人ができた時。試合に負けて、悔しくて血の味を噛み締めながら走り続けたあの日も全て此処の潮の香りから込み上げてくるエネルギーにかえる。

今日その幼馴染みの友との感傷の中で僕は確実に得難い物を今日得た気がする。

この香りが育ててくれたモノ。僕が得たモノをいつか幼馴染みにできる様になりたい。

今の僕では想像さえ出来なかった当たり前に日がさした。

でも想像は誰でもするだろう。でも僕は想定していなかった。

利権に塗れ利己的になり続けた二十歳以降。

成す人となって僕は人間では無くなったのだろうか?この潮の香りはいつでもソバにあった。

今またスタート出来るだろうか?僕はまだこの香りを信じていられるだろうか?

雪が降らない茶色の砂浜に白い靴をあてて僕らは進み続けるしかない。

明日から少しづつ、、いや心はいつでも行きたい方の真正面を向いていよう。

でも周りへの配慮を忘れないで居たい。今まで知らずに受け取ってきた優しさをこの変わらない香りと共に活かしていきたい。

此処には僕の特別がある。幼馴染みの必然もある。幼馴染みとの共通のこの香りを活かしていこう。

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