第87話

無理矢理突っ込んだら血が出た?

それだけ?

何言ってるの…。

あれは、あの血は、女の子の…?



「同意の元だよね…?」


「……」



自分の顔が、蒼白になるのが分かった。

だって、

だって穂高は…。



「枕元にも…あったよ、血…」


「唇、噛んでたからな」


「襲ったの…?」


「なあ、俺のすること文句言うなって言ったよな?」



穂高が、ソファに座りながら私を睨みつける。



だれ、誰を襲ったの。

血が出るほど無理矢理、したの?

そう考えて、思い出すのは、拉致したあの子…。裸の写真を撮った子…。



確か、いちかわ、まき、っていう子だったはず…。



「…血が出るほどするなんて、」


「口出すなって言ってんだろ!!」


「真希って子でしょっ、いくら敵でも、」


「…──…お前、なんで知ってる?」



穂高の声が一気に低くなった。これは徹に聞いたこと。ああ、本当に私は馬鹿だ。このことは穂高派しか知らないことなのに…。

徹に教えてもらったって言えるはずがない。

何も言えないままでいると、舌打ちをした穂高は「…どうせ徹だろ」と、不機嫌に紫煙を吐き出した。



「あの女が、もみ消したんだよ。お前、女の写真送ったのも知ってんだろ」


「…もみ消した?」


「バレたくねぇんだってさ」


「……」



バレたくない?

それはつまり、山本聖にバレたくないってこと?誰にバレたくないの?



「あの女のせいで、考えてた予定が全部無くなった。ムカついて抱いたら結構すっきりしたわ」


「違うでしょ、私が全部ダメにした…。私にするべきの八つ当たりで…その子は関係ない…」


「そうだな、だからちゃんと選ばせてやったよ」



……選ばせた?



「写真、ばらまかれんのと、やられんのどっちがいいってな」



写真…。



「…なんでなの、穂高、私の時写真始末してくれたのに…。写真がすごく怖いものだって穂高も分かってるよね…?」


「……」


「今は、その写真どこにあるの…」


「消したわ」



消した?



「好きでもねぇ女の写真、とっとく趣味ねぇからな」

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