第83話
「…酷いよ……」
唇が離れ、私は手のひらで自分の唇をおさえた。
倭の右手が離れていく。
「気持ちを確かめるために、こんな……」
目から涙が滲んだ。
「好きだって言ってるのに……」
そのまま涙を流せば、涙の向こうで、倭の顔が歪んだような気がした。どうしてキスしてきた倭が悲しい顔をするのか分からない。
倭がまた私に手を伸ばしてきて、そのまま頬に触れようとしたから。その腕を振り払い、私は倭を睨みつけた。
「信用してないのは、倭の方…」
「その」
「…初めてだったのに…」
「…初めて?」
声の色をかえた倭。
「もう、知らない……。倭のバカ…」
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