付仲

第76話

────入学してまだ2ヶ月…。


左腕はまだ症状は軽いものの、背中の火傷が酷かった。2週間ほど入院して、そこから家に帰っても治癒まで時間がかかるようで。


早くても1ヶ月…。




倭が入院して3日目。

学校に行けず、私はずっと病院に来ていた。

面会は家族のみで、会うことが出来なかった。



怖い顔をして穂高が病院に来た。待合で座っている私の横に座った穂高。

穂高は、やったのが亜貴だと分かっているようだった。



「……酷いのか?」



穂高に聞かれても、口にすることが出来なかった。



「……誰に聞いたの…」


「救急車で倭が運ばれたのはみんな知ってる、倭が刃向かえねぇ男がやったのも…」



刃向かえない…。



「……わたしを庇った…」


「……」


「わたしが、失敗したから…」


「…知ってる、向こうの護衛の数増えてたから。お前がヘマしたのは」



きっと私が失敗した瞬間から、護衛の数を増やしたんだろう。

それで、亜貴にもバレたのかと気づき…。



「証拠隠滅のために…亜貴さん、私の顔を燃やすって…」


「……そうか」


「…それを倭が庇ったの…」



ポロポロと静かに泣く私を見て、一瞬にして鋭く目の色を変えた穂高は、「意識はあるのか?」と、私に聞いてくる。




「……ある、」



けど、会えないから…。



「退院の目処は?」



私はそれに首を横に振った。

だって菌が体の中に入れれば……。




「……傷が、」


「……」


「あたしが、失敗、しなかったら…」


「……」


「や、やまとに、…やまとに…」


「…倭が退院する前にケリつける」



ケリ…?



「西高との〝火種〟探す」


「……」


「──……あいつも燃やしてやる」



立ち上がった穂高は、そのまま病院から離れた。精神的に参っていた私は、その背中を追いかけることも、見つめることも出来なかった。






──『俺はお前を守るならなんだってするよ』





──『どうやって私のことを守るのよ!!』





精神を落ち着かせるために、スマホを見た。

それでも体が震え、泣きながら蹲るようにスマホを額に当てた。




倭………。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る