第72話

日曜日、ガスバーナーを買いに行った。

レジで購入し、袋に入れながら、これで私の顔が燃やされるのかと思ったけど、もう諦めている私は無感情だった。



信用できる穂高がいる。

これ以上穂高に迷惑をかけるわけにはいない。だけど倭のことは穂高に任せられるから…。



きっと、穂高がいなかったら、私はこんなにも冷静でいられなかったと思う。



月曜の朝、倭が家まで迎えに来た。

倭と目が合う。

顔を燃やされれば、私は目も見えなくなるのだろうか?亜貴のことだ。もしかしたら目から燃やし始めるかもしれない…。



そう思ったから、目の前を歩く倭の後ろ姿を目に焼き付けた。

倭は何も喋らない私に、「…休むか?」と聞いてきたけど、休む訳にはいかないから。



倭の顔が燃やされてしまうから。

私の好きな倭が──…






「お前、原田?」




学校に着いた下足場で、全く知らない男に話しかけられた。眉を寄せ、「…なんですか?」と、その人を睨む倭。


話しかけられた理由は知ってる。

1度、あったから。

今日以外にも呼び出されたことが。



「亜貴さんが呼んでる」



私の予想通りの言葉に、倭はもっと眉を寄せてた。



「亜貴さん?奏乃、呼び出されるようなことしたのか?」



倭は何も知らない。

何も知らない。


知らないままで、いてほしい。



「なんだろう、分からない…。先に行ってて、亜貴さんのところに行ってから教室に行くから」



にこりと笑えば、倭の目が鋭くなり。



「お前を1人にさせるわけねぇだろ」


「倭…」


「亜貴さんどこにいるんですか?」



私に伝言をしにきた男は、倭のことをよく思っていないらしく、聞いた倭に向かって「──視聴覚室」と、舌打ちをした。

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