第67話

学校内で、私は倭とよく一緒にいるようになった。


それでも倭が私から離れる時がある。そういう時は「絶対人がいるところにいろ」と言ったり、「奏乃を見ててくれ」と同じ中学の男に頼むようになり。


私が襲われないように1人にさせない倭は、「安藤、ちょっと来い」と、年上の学年によく呼び出されるようになった。



呼び出された後、倭は1時間ぐらいしてから帰ってくる。今日も昼休みの時間、他学年と思われる生徒に呼び出された。

いつも通り、同じ中学だった町田まちだに私のことを頼んだ倭は教室から出ていく。



「あいつ、この前3年のやつ、ボコったろ?」



そんな町田は、離れていく倭の背中を見て、ぽつりと呟いた。

町田の言葉で、私が襲った彼らは3年生だと知る。つまり、亜貴と綾と同じ学年。



「それ、まあ、結構やばかったみたいで。倭…目ぇつけられたっぽくて」


「どうして…、チーム内は、なにしてもいいんでしょ…」


「まあそこは、先輩後輩というか…。だから晃貴のやつ今ありえないことしてんだよな。今あいつ3年からも〝晃貴さん〟って呼ばれてるし…」


「…そう…」


「倭もなかなかやばいよ」


「……」


「普通にやり返してるから」


「……」


「俺も前、止めに入ったし…。先輩たちじゃねぇよ?倭を止めに入った」


「倭、ケンカ強いの?」


「つえーよ、お前、知らねぇの? 中学ん時も結構もめてたじゃん」



もめてた…。



「原田のことになるとあいつマジで周りのこと見えなくなる。…原田にはその姿、見せねぇけど」


「……うん」


「亜貴さん、倭のこと気に入ってる…」


「…みたいだね」


「俺、亜貴さんが卒業したら、次は倭になると思う」



派閥のトップ



「だから2年が騒いでる」


「…2年?」


「普通は1年学年ごとに、入れ替わるから。雅紀派は、もうほぼ2年の泉って決まってるし」




1年学年ごと…。

だとしたら、亜貴の次は、今の2年生の誰かになるはずだった。

泉は亜貴が、気をつけろって言った男。



「今年の1年はおかしいって」


「……」


「2年はその1年を潰そうと必死だしな」


「……」


「お前も気をつけろよ?」

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