第66話

「俺の事、信用してるんだろ?」


「……」


「だったら黙って見とけよ」


「ほだか…」


「…もうすぐあの派閥は俺のになるから」


「え…?」


「派閥のトップっていうのは入れ替わりが激しいからな」


「…どういう意味?」


「チーム内だったら何してもいい、それが決まりだろ?」



知ってる。

私もそれで犯された。



「強いやつが1番になる、頭でも暴力でも…。黛は俺よりも下だった。それだけの話」


「でも、トップには逆らえないんじゃ…」


「周りから崩せばいい、さっきの女はそのひとつだった」


「…穂高よりも上の人が現れればその人が1番になるの?」


「ねぇよ、ならせない。原田がこの学校にいる限りは」


「……うん…」


「ただ人数が少ねぇから、西高の奴らを潰して入れたいけど。緩いからな」



人数が少ない。

1番多いのは、亜貴のところ。


西高…。思い出すのは、亜貴の話。



「緩い…?」


「使えねぇってこと」


「……」


「バイクばっかいじって暴走族気取ってる奴らばっかりだからな。向こうで使えんのは高島か」


「高島…?」


「高島綾の弟」



弟…。



「俺のすること、文句言うなよ」


「……うん、」


「女が泣いても」


「……」


「俺が無理矢理やっても」


「……それ、は」


「分かってる」


「……」


「お前の言いたいことは」


「……うん」


「廻さねぇよ」


「…うん…」


「やる時は、俺だけ。他の奴らにはやらせない」


「……暴力もやめて…」


「…ああ…」


「穂高」


「…なんだよ?」


「バレたらきっと、私、亜貴さんに殺されると思う…」



ぴくりと反応した穂高は、「…何を?」と低い声を出した。



「穂高のこと、信用してる…」


「ああ」


「私、亜貴さんに橋本薫に近づけって言われてる」


「……」


「この人が誰か、穂高なら分かるよね…」


「そうだな…」


「穂高が、西高を狙ってるの、亜貴さん知ってる…」


「……分かった」


「何かあったら、倭のこと、お願い……」


「何かある前に何とかしてやる」



安心の涙を流す。



「穂高…」


「ん?」


「…さっき、やめてくれてありがとう…」



抱くことを…。


もう足が震えてない私を立ち上がらせた穂高。


そんな穂高は軽く私の頭を撫でた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る