第64話

「体の関係は、同意の元なの…?」



穂高の目が細くなった。



「お願いだから、無理矢理は…しないで…」


「それお前に関係あんのかよ」


「女の子を傷つけないで…」


「なあ」


「絶対、無理矢理はやめて…」


「俺、お前と倭の為に動いてるんだよな?」


「穂高…」


「お前が俺に指図してくんな」


「私は指図してない、ただ、本当に…」


「……」


「穂高は、」


「……」


「…女の子を大事にしようって思わない?」


「思わない」



即答する穂高に、何を言えばいいか分からなくなる。

中学時代、エリ先輩から私を助けてくれた男。



「さっきの女は黛の女だった、それを俺が使った」


「使ったって…」



そんな言い方。



「自分の男の立ち位置がやばくなったら、簡単に股開いた女を傷つけるなって言われてもな」


「立ち位置って…?」


「…つーか、大事にするってなんだよ?」


「え?」


「大事にしてる女以外、抱くなって言ってんのかよ?好きなやつだけって?とんだお花畑だな」


「そうじゃない…、大事って思ってなくても、同意の元なら……無理矢理は良くないって話で…泣かすのも…」


「…だる」


「穂高」


「じゃあ女を泣かせねぇかわりにお前がどうにかしろよ」



どうにか?

私が?

何をどうするの?



「お前がやらせてくれんなら考えてやる、もちろん同意の元でやらせてくれるんだろ?」


「何言ってるの…」


「倭を元に戻すなら、お前も使うって話だろ」



私も…?



「同意なら、掟破りにもならないしな」



同意なら…。

掟破りにはならない。


私が穂高に身を渡すなら、穂高はほかの女の子を傷つけない…。


簡単に女の子を泣かせる穂高…。




1人、2人、3人、4人、5人、6人…

橋本薫…

その中に穂高が増えるだけ。



何も言わない私に舌打ちした穂高は、私の腕を乱暴に掴むと隣にあった鍵のかかってないパソコン教室へ連れ込んだ。


あまり使われてないらしい。少し埃っぽかった。


電気をつけることも無く、私を前向きに壁へ押し付けた穂高から、「ゴムねぇぞ」と冷たい声が後ろから耳に届いた。

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