離仲

第63話

「──まって!まって晃貴くん!」



その女の人の声は、やけに大きく耳に届いた。

倭が血まみれになって帰ってきてから3日後の昼間。

廊下を歩いて階段を登ろうとした時、ちょうど上から来たらしいその人たちと鉢合わせした。

廊下には何人かの生徒たちがいて、なんだ?とその大きな声の元凶に顔を向けていた。



一人の男を、必死に追いかけている女。



「お願いだから待ってよっ」



それを当たり前のように無視する男…。その男は私がいることに気づくと、目を細めた。


穂高──…。


逃がさないように穂高の服を掴んだ派手な女が、「どうすればいいの…っ」と、叫んでる。



「…しつけぇな」


「だって、晃貴くんがっ…」


「俺が?」


「わたし、このままじゃ…っ」


「知るかよ」


「…やったよね?!」


「あ?」


「晃貴くんの彼女になりたいから、私っ…」


「…」


「私とエッチした時も…っ!あれは嘘だったの…?!」


「消えろ」



何度か見たことある光景。

女関係が悪い穂高…。

穂高の髪は前に見た時と少し違っていた。

黒い髪に、金のメッシュが入っていた。



ボロボロと泣く女に軽蔑のような目を向けた穂高。穂高と体の関係を持っていたらしい。

女を放り、階段をおりてきた穂高は、私と目を合わせた。


女は泣きじゃくりながら、その場を離れていく。



……穂高、また、何したの?




「お前、顔死んでんな」



鼻で笑った穂高は、そのまま行こうとするから。さっきの女の涙を思い出せば、私は穂高を追いかけていた。



1階まで戻り、パソコン教室前。



「穂高…」



名前を呼べば、振り返ってきて。



「…穂高、女の子で遊んでるの?」


「あ?」


「さっきの子、泣いてたから…」


「知らねぇよ」



不機嫌そうに、どこかへ行こうとする。



「まって、お願いだからまって、」



けど、また立ち止まってくれた穂高…。



「しつけぇな」



機嫌が悪いらしい。



「穂高…、1番になるために、女の子を使ってるの?」


「……」


「使ってるの?」


「使って何が悪い?」



やっぱり、さっきの子は……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る