第62話

夜だったこともあり、次の日、朝から倭は私を病院に連れて行った。

避妊してたか聞かれてないのに、避妊してないと倭は確信しているらしい。


避妊薬を処方された。

倭はすぐにそれを私に飲ませた。


また私を倭の部屋に連れてきた。

倭には知られたくなかった。

でも、バレてしまった。

「…どんなやつ?」と優しく聞かれても、倭になんて言えばいいか分からなくて。


だけど。



「…掟破りにはならない…って、言ってた」



そう言うと倭は分かったらしい。



「…分かった」



静かに呟いた。






「絶対部屋から出るなよ」



倭は怖い顔をしていた。

制服を来ていたから、学校に行ったんだと思う。


それからどれぐらいの時間がたったか分からないけど、倭が帰ってきた。

帰ってきて私に会わずすぐにシャワーを浴びに行った。体を洗っている倭にバレないように、脱衣場を覗けば、〝赤〟が拡がっていた。



倭の白いカッターシャツは、赤く染まっていた。だけど部屋に戻ってきた倭に、ケガなんてひとつもなくて。



「…もう保健室に行くなよ」



…うん、と、頷いた私は、倭が何をしてきたのか悟り。




その悟りが、確信に変わったのは『体調どうだ?』と亜貴から電話がかかってきた時。


倭が血まみれで帰ってきたその日の夜、私はもう自分の家に帰ってきていた。




『倭がチームのやつ、ボコボコにしたんだけどお前なんか知ってる?』


「……」


『おい』


「…亜貴さん」


『あ?』


「本当に…あなたについていけば、襲われることはなくなりますか?」


『……』


「…答えてください…」


『なに、お前まさかまた襲われたの?』


「……」


『あー…なるほど、それで倭がキレたのか』


「……」


『昨日、あいつ手に負えなくてさぁ、俺が止めるまでずっと殴ってたからな』


「……」


『いや、ずっと殺そうとしてた、だな』


「……私、何をすればいいですか、」


『とりあえず橋本薫に近づけ、また連絡する』


「……はい」


『まあ、お前のことは襲うなって伝達しといてやるよ』




切れた通話。

届いたライン…。


そこにはとある男の画像と、とある住所と、どこかの店の名前が書かれていた。

『山本の女の護衛が少なくなる時間だけ分かればいい』とあり。




橋本薫

画像を見る限り、体が大きそうで、すごく見た目が怖そうな人だった。





私は一体、何人と体の関係を持つのだろう…──…

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