第61話

倭がどうやって飲ませたか分からないけど、いつの間にか飲ませてくれたらしい痛み止めの薬が効き、ぼんやりと起き上がる頃には頭痛はマシになっていた。


まるで、さっきの事が夢かと思うほど。

倭の部屋のベットの上から、カーテンをあけ窓の外を見ていた。

もう外は雨が降り出していた。

私の目からはもう涙は出ていなく、亜貴の言葉を思い出していた。


レイプや薬物が当たり前の清光高校。

それを無くしたいと。

本当に亜貴の言うことを聞いていれば、そんな未来が待っているのだろうか。

保健室の、私が寝る前の乱れていたシーツを思い出す。もしかしたら私が襲われる前、他にも襲われていた女の子がいたと思えば、本当に辛く……。



「…奏乃」



ベットの上で、倭が私の手を握った。

もう泣いていなく、落ち着いた表情をしている私に声をかけた倭。


窓から倭の方を見れば、倭の視線は私の手首にあった。



「…お前、俺が来る前、なにしてた…?」



倭の声は、すごく苦しそうだった。


必死に抵抗していたから。一人の男が、私の手首をずっと血が止まりそうなほど掴んでいたから。



「…なにされてた?」



ボタンがとまっているとはいえ、そこから覗く掴まれたアザが、倭からは見えていて。


何があったか確信しているらしい。言い方をかえた倭の手は、震えていた。その震えが私にまで伝わる。


倭はそれ以上何も言わなかった。




「……──殺してやる」




ただ、それだけが耳に届いた。

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