第53話

どうする、と、言われても。



「綾…、さんが、大事だから…、清光高校を支配して、…一切禁止するってことですか」


「そうなる」


「綾さん…を、あなたが、守るって意味ですか」


「うん」


「どうして守るんですか…?」


「どうしてって?」


「だって、あんなにも…」



強い、というか。

恐怖を与える存在なのに。



「さっきの将輝の会話、聞こえなかった?」



聞こえなかった?

そういわれても。

あの時は首を絞められていたから。

記憶が曖昧で…。



「綾は昔、やばいやつとつるんで、クスリを覚えちゃったから」



クスリ…?

薬物…。



「まあ、そいつらと縁切ろうとしたら、綾が、綾の弟を殺すぞーって脅されてさ。まあそいつらは半年前に捕まったんだけど、綾はクスリが好きなままでさ」


「…」


「そのクスリを管理してるのが将輝たちなわけ」


「病院に、いけば…。クスリをやめたいのなら…」


「それもアリなんだけど」


「…」


「これからの事も考えたら、将輝たちは潰れてほしい」



これからの事も…?



「倭たちが手を出さない、可能性はゼロじゃないだろ?というより、気づかずにっていうパターンもあるからな」



倭が?

そんなこと、あるはずない。



「気づかずにってどういうこと…」


「飲み物に混入とか、なんならキメセクでもしたら1発だしな」


「……」


「綾が病院にいけばもちろん警察にも話が行く。下手すると鑑別。そうなればいつムショから出てくるか分からない奴らから弟を守れないって言うのが綾の本音」


「…………私は、綾さんが怖い。綾さんのためにっていう行動はできません…」


「いいよ、奏乃ちゃんは倭のために行動してくれればいい。もちろん倭たちに内緒。危険な目には合わせない、それは約束する」



危険な目には…。

約束…。


倭には、内緒…。



「ひとつ、いいですか…」


「うん」


「綾さんが、弟思いで。亜貴…さんが守りたいっていうのは分かりましたけど…」


「…」


「亜貴さんは?」


「…俺?」


「穂高のこと」


「……」


「穂高のこと、大事だと思ってますか…」

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