密仲

第54話

元々、亜貴は嘘をついていた。

私の中では悪魔のような存在だから。


だから今回のことを聞き、私は心の中で〝どこからが本当で、どこまでが嘘なのか〟と考えていた。



ボタンを最後までしめないと、亜貴に絞められたアトが残っている。これを見ればやっぱり悪魔で私は騙されているんじゃないかって思う。


だけど最後に話してくれたのが本当の事ならば…。


ううん、亜貴は、決していい人じゃない。

だってこれからのためなら、私をコマにするつもりだから。

私を、手のひらで支配しようとしている。


だけど亜貴の言うことを聞き、本当に倭が安全な場所に行くならば、私は亜貴に従うまで…。

倭たちには内緒で…。



〝2年のいずみには気をつけろ〟



連絡先を交換した亜貴から送られてきたメッセージを見ていた。


2年の泉…。


1年の私たち。

2年の泉。

3年のトップたち…。



「奏乃」



帰り道、倭と帰っていると、倭に名前を呼ばれ。スマホから顔を上げた私は倭の方を見た。1週間前よりも背が高くなっている倭は、「どうかしたか?」と、低い声で呟く。


小さい頃よりも、声変わりした倭の声は、低く。



「ううん、なんでもない」



スマホをポケットの中にしまった。


そのまま二人で歩いて帰っている最中、私は「倭」と声をかけた。



「なに?」


「倭はどうして、亜貴さんのところに入ったの?」


「え?」


「穂高が嫌いだから?」



少し、顔を顰めた倭は、「…いや」と呟く。



「じゃあ、どうして…」


「俺が西高のやつらに絡まれた時、〝弟の友達だろ〟って助けてくれたのが亜貴さんだったから」


「……」


「清光に入るって言ったら、綾さんにボコられたけどな」


「ぼこられたって…」


「そりゃそうだろ」


「…」


「…お前、なんかあったか?」


「……倭は、この学校で1番になりたい?」


「…なりたいよ、そのためにここに入ったんだから」


「1番になったら、どうするの?」


「…」


「倭も、1番になるためなら、なんでもするの?」


「奏乃…」


「女の子も、襲ったりするの…?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る