第49話

…ルール…。



「その派閥のトップには逆うのはご法度」



少しずつ苦しくなっていく呼吸に眉を寄せた。ちょうど喉が当たる部分に親指を当て、確実に酸素不足になる絞め方をする。



「そのちゃんは、俺が嘘をついたから怒ってる、でいい?」



聞かれても答えることが出来ない。


私が怒ってるのは、倭の心を操ったこと。穂高を悪者にした事。



「じゃあ嘘が本当になるように、既成事実をつくればいいってわけ?俺も〝穂高〟だし」



嘘が本当?

既成事実?

〝穂高〟?



何を言っているのかと顔をしかめれば、首元にある亜貴の指先の力がぬけ、呼吸がしやすくなり大きく息を吸った。


その動く首元に、顔を埋めてきた亜貴に、呼吸が止まりそうになる。




何してるの…。



当たり前のように、スカートの中へ手を入れてきた亜貴に、パニックが止まらず。



「やっ、」



叫び声が、上手く出なかった。

さっきまで首を絞められていたからか。



「や、やめてっ……!」



次に出た声も、小さく。



「〝穂高〟に犯されたって言えばいい。これは嘘じゃない」


「っ…」



最低最悪の、人間…。


私を抱くつもりの亜貴…。


既成事実…。






「……お願いだから、倭には言わないで……」




そういった私の目からは、涙が出ていた。

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