第46話
私は別に、強くはない。
次の日、学校に行こうと思い制服に着替えたものの、綾にいう男のことを思い出せば膝と手のひらが震えていた。
数人の男たちに廻された時も、こんな風に身体中が震えていたことを思い出す。
今日も呼び出されたらどうしよう?
今度こそ犯されたら?
怖い…。
でも、これが私が選んだ道…。
そう思うのに体は拒否していて、私は結局学校を休んだ。
私がベットの上で眠っていると、いつの間にか倭が部屋の中にいた。
昔はずっと出入りしていたけど、今となっては珍しくて。
今何時だろう。
外はオレンジ色。
もう夕方らしい。
「なあ、」と、眠っている私の視線に合わせながら、ベットに腰かけた倭は、「きのう」と、話を続ける。
「亜貴さんたちに呼び出されたって聞いた」
誰が言ったんだろう。
言わなくてもいいのに。
黙り込んでいると、「その」と名前を呼ばれ。
「亜貴さん、お前のこと呼び出したらしいけど」
「…」
「亜貴さんのこと、怖かったのか?」
倭は何を言ってるんだろう。
呼び出されたこと、聞いたんだよね?
誰かから聞いたんだよね?
それなら分かるでしょう?
私が何をされたか。
凄く怖い思いをしたことを。
「亜貴さん、怖がらせたかも、って、申し訳なさそうにしてたから」
申し訳なさそうにしてた?
え?
したのは、あんなことをしたのは、穂高の兄なのに?
「え…?」
「おまえ、」
「あの、」
「晃貴に遊ばれたんだって?」
私の手首をつかみ、倭は訳の分からないことを言う。
遊ばれた?
誰が?
私が?
穂高に?
え?
「…その事で、弟が悪いことしたって、亜貴さん謝りたかったみたいで」
は、
「大丈夫か?」
大丈夫ってなにが?
倭の言ってることが、さっぱり分からない。
「何言ってるの…」
「何って」
「穂高はなにも…」
「なにも?バカかお前」
「倭?」
「やられたんだろ?お前の気持ち知ってて…」
やられたんだろ?
だから、なにを?
穂高が、私に何をしたの?
「…え?」
「亜貴さんが、お前と晃貴が家でやってたの見たって。それで付き合ってるのか昨日聞いたら、奏乃は付き合ってないって言ったんだろう? 晃貴の代わりに謝ろうとしたら怖かったのか逃げられたって聞いて…」
倭の話を聞いて、本当にあの男は性格が悪いと思った。
事実無根だ。
私と穂高にそんな関係はない。
私で遊んだのは、穂高じゃない。
抗争をするには、なんでも使うのか。
自分以外は、駒なのか。
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