第45話

「奏乃」



教室に向かっている最中、どきり、とした。


別に私が悪いことをしてる訳じゃない。

だけどさっきの穂高の兄の事があったから、いつもより驚くのは当たり前で。


廊下で倭に呼び止められ、私は足を止めた。



「どこいってた?」



どこって、穂高の兄に呼び出されていた…。

高校生になってから無視しないようになった倭には心配かけたくないから…。



「……別に…。ちょっと調子悪いから帰るね」



早退するという私に、眉を寄せた倭は、いったんカバンを取りに向かうとした私の腕を掴む。



「なんかあったか?」



なにか?

あったよ。

また犯されそうになった。


険しい顔をする倭に、顔をふる。

倭に言えない。

言いたくない。

私はこれ以上、倭に〝不良〟になってほしくない。



「風邪ひいたのかも」



私は笑いながら、倭の手から逃れ、教室に向かった。


そしてその後、どうしてか私を家まで送ってくれた倭…。



「ちゃんと休めよ」



私が清光に入ることをよく思ってない男は、玄関まで見送ってくれて。



「倭…」


「なんだよ」



穂高派は、やめよう…。

そう言いたいのに、言えない。

倭は私が何を言っても〝不良〟をやめない。



「……」


「どうしたよ」



倭が私を見つめる。



「なんでもない…、またあしたね」

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