第43話

「…なに、言って…」


「ん?」



にっこりと笑うその人は、「嬉しくないの?」と、私から頬を離す…。



「彼女って…」


「うん」


「あ、なたの、?」


「うん、いや?」


「い、いやです…」



穂高の兄は、私がそう言うと思わなかったのか、キョトンとした顔のあと、またゆっくりと微笑む。



「そっか、ふられちゃった。んじゃもう行っていいよ」



立ち上がった彼は、「綾」と、まだ見下ろしている鋭い目の人に遠のくように言う。あっさりと遠のき、私は体を引きずるように後ろに下がった。


まだ、肩が揺れる…。



「素直な子は好きだから、今回は見逃してあげる。晃貴によろしくね」

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