第22話
嫌な笑い方をしながらコンビニへと入っていく彼らたちを鋭い目で見つめた穂高は、「…何やってんだよあいつ…」と、どこかへ歩き出そうとするから。
「待って!」とそれを引き止める私は、全く今の状況が理解出来なかった。
「穂高、いま、今の何?何の話してたの?!」
どこからどう見ても不機嫌な穂高は、歩く足を止めない。
「派閥って何?!今の、清光高校の人でしょ!」
「…」
「や、倭…どうしたの?」
「…」
「亜貴とか、綾って…」
「…」
「ねぇ穂高っ!」
ずっと私を無視する穂高の服を掴めば、穂高は鋭い目をしながら「亜貴は俺の兄貴だよ聞いてて分かるだろっ!」と言ってきた。
「兄…」
仲の悪い兄…。
「綾は、そいつのツレ。クズ」
「…」
「高島良って聞いたことあるだろ?それの兄貴だよ」
確かに、聞いたことはあった。
長身で金髪を見れば、逃げろって言われたことがあったような、無かったような…。
「その人たちと、倭が何の関係があるの…」
「だから」
だから?
「つか、お前、マジでなんも知らねぇのな?」
何も知らない。
当たり前じゃん…。
私は不良じゃない…。
「倭は清光に行こうとしてる。そんでその3つの中の派閥の俺の兄貴がいるところに入ろうとしてる、けど断られて高島綾にボコられた。分かったか?」
分かったかって…。
倭は、清光高校に入ろうとしてるの?
それに、怪我って。
「倭…、大丈夫なの?怪我って……」
「だから今から倭んちいって、どーいうことか聞くんだろ」
そういった穂高は、私と倭の家がある方へと歩き出した。
怒っているけどどこか冷静な穂高は、私の家を知っていた。穂高の後ろについて行く。倭の家からはおばちゃんが出てきて、私がいる事が分かってかすんなりと中へ入れてくれた。
穂高は多分、何度かここに来た事があるらしい。戸惑いなく、ノックもなく扉を開けた。
──中は、タバコの煙で充満していた。
ちょうど倭はタバコの火を消しているところだった。
私と穂高が来たことに、驚いて目を丸くさせている倭の頬は、青く変色していた。所々出血したような箇所があり、どこからどう見ても怪我人だった。
だけど、それを気にもしない穂高は、倭の部屋の中に入ると、何も言うことなく倭の胸ぐらを掴んだ。
険しい顔をした穂高に、「なんだよ」と睨み返す倭に、「お前、何バカやってんの」と睨み返す。
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