第21話
──結局、倭と穂高の仲の悪さが戻ることは無かった。というよりも、益々仲が悪くなっていってるようで、クラスの中もそうだし2年生の教室があるこの廊下さえも、空気が悪いように感じた。
私はあれから穂高と何も話してない。倭とはたまにすれ違うけど、声をかける私を無視する倭に私もだんだん腹が立ってきて、声をかけることが無くなった。
3年生なり、先輩がいなくなった部活は、1年の頃よりも断然に楽しかった。
土日の部活帰りのその日、コンビニに立ち寄った私は、デジャブな後ろ姿を見つけた。
家庭が複雑な男。
また、今日も兄が帰ってきているから家を出ているのか…。
「何してるの?」
その背中に問いかければ、ピクリと反応した彼は私の方に向く。話しかけたのは学校ではなく、人の目が無いからか。
「久しぶり、穂高」
ヒラヒラと手を振れば、あからさまに面倒くさそうにため息をつくと、「…でた、」と、まるでお化けみたいに言ってくる。
「出たって何?」
「そのまんま」
「人をお化けみたいに…」
ブツブツ言いながら、座り込んでいる穂高の横で膝を折った。
「…何してんだ、帰れよ」
と、鬱陶しそうにする穂高は、ポケットから煙草を取り出しそこに火をつける。
「…あの、穂高に聞きたいことあるんだけどさ?」
そう言って、私は穂高に倭関連の質問しようとした時だった。「──…あいつ、
その声に、すぐに反応した穂高は、持っていた煙草を捨てると「お前、今すぐ帰れ」と鋭く、さっきとは違いすぎるトーンで私に言うと、立ち上がった。
穂高?
え?
なに?
「帰れ」
まるで穂高に言われてるのではないような低い呟きに、立ち上がった私は、「…わ、わかった、けど…」と、足を動かそうとした時、
「よぉ、やっぱ亜貴の弟だわ」
と、私と穂高よりも年上の男性たちが近づいてきて、その人たちを見てすぐに青ざめた私は、一瞬にして逃げたくなった。
私よりも年上と分かったのは、とある高校の制服を着てたから。
土日なのに、その制服を着ている彼ら。
「亜貴の弟? まったく似てねぇな」
合計で、3人。
3人とも、この地域では、近づくなと言われている怖い人たちがあつまる清光高校という制服を着ていて。
青ざめる私を見て、「わお、弟の女? 可愛い」と、どこからどう見ても、派手で、遊んでそうな怖い容姿…。
倭や、穂高とは、比べ物にならないぐらいの、不良…。
青ざめ、震えて動けない私を見て、「そうですよ、あんまりジロジロ見ないでやってください」と、私を背中に隠す穂高…。
今更になって、「帰れ」と言った穂高の意味が分かり。
というより、穂高の知り合い?
〝そうです〟って何?
私は穂高の彼女じゃない。
「あ〜そう?持って帰ろうと思ったけど、亜貴の弟のは廻せねぇわ、ざんねん」
ケラケラと笑う男に、背筋を凍らせていると、
「ああ、そうだ、お前んとこの学校に倭っつーガキいるだろ」
知った名前が聞こえ、ピクリと肩が動いた。
「…やまと? あんまり名前、覚えてなくて。何かありました?」
「なんだ知らねぇのか」
「…」
「あいつ、派閥に入れてくれって言ってたぞ?」
「……え?」
「まあ、
「…」
「お前は歓迎するぞ?なんせ亜貴の弟だからな」
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