第17話

2年にあがり、私と、穂高が同じクラスになった。

同じクラスと言っても、倭の事があってからは穂高とあんまり喋らない。


というよりも、その時の穂高には彼女がいた。その女の子も同じクラスの子だった。


一緒に帰るのも見かけたし、手を繋いでいるのも見た。たまたま穂高と教室の中で2人きりになり、「佐由子さゆこの事好きだったの?おめでとう」と言ってもあまり穂高は嬉しそうじゃなかった。



「あいつ俺の顔、タイプなんだって」



どちらかというと、かっこよく、爽やかな顔を持っている男。



「なんかもう、どうでもいいわ、顔がタイプとか1番うぜぇし」



そんな穂高が佐由子と別れたのは、付き合って間もない頃。

教室の中で佐由子は「なんで?」と泣いていた。穂高は鬱陶しそうに「うるさいから」と言っていた。



穂高はモテる。

顔がいいかなのか、なんだかんだ良い奴だからなのか。女の子は穂高と話すと、ときめく、ようで。

佐由子と別れた今度は隣のクラスの子と付き合っていた。あろうことか、廊下でキスをしているのも見た。

それでも穂高はすぐに別れていた。



会った穂高に聞いてみた。「なんでそんなにすぐ別れるの?」って。穂高は「鬱陶しくなった」との事で。



「鬱陶しいって…」


「すぐ泣くし、だるいだろ」


「泣かせることしなきゃいいじゃん」


「文句言ったら泣いたんだよ」


「どんな文句言ったの」


「……」


「穂高…」


「顔がいいらしい」


「え?」


「俺んとこ、親離婚してんの。離婚の原因、俺が浮気相手の顔に似てるから。そんな顔をかっこいいって言われても嬉しくねぇよ」


「…」


「だから別れるって言った、それだけ」



乾いた笑いを出した穂高…。冬の出来事を思い出す。兄貴と、仲が悪いらし男。


穂高の家庭は、複雑なのが分かった。








その日の放課後だった。


「晃貴と倭が向こうでケンカしてる!!」っていう、誰かの声が聞こえたのは。


生徒たちは騒がしくなり、私は若葉と一緒に喧嘩してるらしい方へと走って向かった。

もうギャラリーは集まっていて、「おい倭っ」って倭を止める声も聞こえ。



私が見たのは、穂高が倭の頬を殴ってるところだった。



倭の頬が殴られたせいで赤くなる。



そんな倭も、穂高に殴り返していた。





なんで………。





2人を、男子たちが止めていた。

先生たちも来て、殴り合いが終わり。



2人は職員室に連れていかれた。



穂高と同小学校の、名字は分からないけど、いつもてつって呼ばてる人に何があったのか聞いてみた。



「いや、俺もよくわかんね…。遠目から見てたけど、殴り始めたのは安藤だったと思う」と言っていた。



「…穂高、倭に何かしたの?」


「さあ…」


「何やってるの…ほんと」



その日、私は久しぶりに倭の家に向かった。倭のおばさんが玄関から出てきた。どうやら倭は家に帰ってるようだった。


おばさんに聞けば、先生から電話が来て、学校まで迎えに行ったらしい。




倭の部屋に来るのは、いつぶりだろうか。

ほぼ1年ぶりなような気がする。


ノックをして、部屋の扉を開ければ、もう制服姿じゃない彼がそこにいて。

煙草を吸っていたのか、少し煙たかった。

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