第16話
結局、痛みが引かず病院へ行った。
全治2週間との事で、私は部活を休むことになった。
走ることは出来ないけど、ゆっくり引きずるように歩けば1人でも歩ける事ができ。
包帯が巻かれている左足は歩きづらいけど。
たまたま廊下で会った部活の2年の、エリ先輩の友達だった人は「大丈夫?エリやばいね。ゆっくり休んでね」と心配してくれた。
元々、エリ先輩と同様私を虐めていた人たちだったけど…。
こんなにも、人って変わるのかと、驚く。
──夏休みに入った。
夏休みでも、倭と私の関係は変わることは無かった。そして穂高と倭と仲の悪さも変わる事がなく。
夏休み中、部活帰りに家の近くで倭に会った。「やまと…」と声をかけてみた。
倭は私を無視した。
それにイラついた私は、もういいと、冬休みになるまで倭にこっちから話しかけることはなく。
──…その日は、雪が降っている日だった。
雪が降ってきたらいつもより早めに終わった土曜日の部活帰りの日、私は地元のコンビニに寄った。寒いから、なにか温かいものが飲みたいなって思ったのがきっかけ。
そこの駐車場に、穂高がいた。
一人で、端の方で座り込みながら。
まだ私に気づいていない穂高に、私は温かい飲み物を2つ買い、後ろから近づく。
「わっ、」と、脅かしながら。
けれどもあんまり驚いた表情をしない穂高は、「…なんだよ」と私がいる後ろに振り向く。
「なに、もっと驚いてよ」
「わー、びっくりした〜」
「わざとらし、」
棒読みの穂高にムカつきながら、「飲む?」と温かいカフェオレを差し出した。
穂高はそれを受け取ると、「…どうも」とお礼を言ってきて。
「何してるの?誰か待ってるの?」
私は穂高の横に腰かける。
同じように買ったカフェオレの缶の蓋を開けた。
「いや、普通に暇つぶし」
「ふーん…、暇つぶしって、家近いの?」
「あそこのマンション」
穂高がそう言って、顎を使い、家の方を教えてくれて。ああ、そうなんだって思いながら。
「……寒いのに、暇で出てきたの?」
「いたくねぇから」
いたくない?
家に?
「どうして?」
「…兄貴が帰ってきてるから」
「兄貴? 仲悪いの?」
「…そうだな」
あんまり笑わない穂高は、「…いただくわ」と、私が渡したカフェオレの缶をあけた。
「……私、部活帰り…」
「見れば分かる」
まあ、ジャージ姿だから。
穂高の顔は、無表情だった。
それは家に帰りたくない原因があるのか。
その兄貴と、喧嘩しているのか。
「……穂高さ?」
「…」
「最近、倭見てる?」
「…」
「なんか、家にも帰ってないみたいで。倭のおばさんも怒ってるんだけど……」
「…
五島?
確か、同小の五島…。
倭と仲良かった男。
「お前、あれから喋ってねぇの?」
あれから。
エリ先輩の事が、あってから。
「うん、クラスも違うし。会わない…。ってか向こうが無視してくるから、私がイラついて喋りかけないってのもあるのかも…」
「…ふうん…」
「ごめんね、なんか」
「なにが」
「私の事が無かったら、穂高と倭、仲良かったでしょう?」
「それは俺だろ、お前らの関係を潰した」
「違うよ、私が…」
「お前、倭のこと好き?」
好き?
そう聞かれて、私は…。
「うん、好き、好きなんだと思う、…」
「…」
「倭はもう、私の事好きじゃないのかな」
カフェオレのおかげで、指先がどんどん温かくなる。
「好きだから、まだ俺と仲悪いんだろ」
「……穂高」
「好きだよ、お前のこと」
「うん…」
まだまだ、今夜は雪が降りそうで。
「じゃあ、行くね。穂高も風邪ひかないようにね」
「ああ…」
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