第15話

エリ先輩は、赤く怒った顔しながら、悔しそうに泣いていた。

そのまま走ってその場を去るエリ先輩を見て、穂高はほんとうに面倒くさそうにため息をついた。



私の方に振り向いた穂高は、「…悪かったな、俺のせいだな」と、廊下に落ちたままの私の筆箱とノートと教科書を拾うために腰を屈めた。



「…う、ううん、ごめん…」


「バサバサじゃん、髪」



面白そうに軽く笑った穂高は、拾ったそれを私に渡してきて。お礼を言ってそれを受け取ろうとした時だった。グキ、っと足に痛みが走り、穂高の腕を支え代わりに掴まったのは。



「痛っ、」


「あー…、足やられた?」


「ご、ごめん!」



慌てて、穂高から手を離す。



「いやいいけど…、お前体重、重いのな」


「はっ?!」


「はは、うそ」



いたずら気味に笑った穂高は、まるでさっきの出来事はなんとも思っていないようで。



「行った方がいいだろ、手当て。お前部活してるし」


「…うん」


「一人で行ける?」


「うん、引きずれば大丈夫そ…」


「連れていくべきなんだろうけど、またややこしい問題になるからな」




ややこしい問題?

いや、一人でいけることはいけるけど。

ややこしいって問題って何?と思っていれば。



「あいつに連れて行ってもらえ」




あいつ。

あいつって?

そう思って周りを見渡す。


そうすれば私の視界の中に、──…金色の髪の彼が、入ってきて。




────倭。



倭が、ギャラリーの中にいた。

いつここに来たのか、私たちを見てた。

その表情は…。




倭が背中を向ける。

この場を去ろうとする。

話があるといって、来てくれた倭がまた私を避けようとする…。



追いかけようにも、足が痛くて走れない。





──…〝勘違い〟…。



穂高が「倭!!」って、珍しく大きな声を出した。それでも倭は戻ってこない…。



「ちょっと!奏乃!大丈夫?! エリ先輩に暴力されてるって聞いたけど?!」



そうしているうちに、若葉がやって来て。

「こいつ頼むわ」と、穂高が若葉に言った後、穂高は倭が消えたらしい方へと歩き出した。





その日の夜、倭に電話をしても繋がることは無かった。

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