第13話

そう言われても…。

ずっと幼なじみだった倭…。

恋愛感情なんて。


そう思って顔を下に向けると、「まさか、俺のこと好き?」と穂高に軽く顔を覗かれる。

穂高のことを?まさか。本当にそんな感情はなく。

それはないと顔を横にふった。

好きな人なんて…。



「いいと思うけどな、お前ら」



穂高はそう言うと、校舎の中に入っていく。

私の事を好きらしい倭の姿は見えない。

倭は私の事が好きだから、穂高に嫉妬をして…。



その事実を聞いて、少しだけ、嬉しいって思っている自分がいた。倭に好かれていることが。


そう思うと、この気持ちは〝好き〟なのかもしれず。いやでも、幼なじみだった倭…。私の中で1番存在が近い。スマホの待ち受け画面にするほど…。





──…思わず頬が染まった。





え、ほんとうに?と自分の心に問いかける。


私…倭のことを?


そんなはず…。


だけども嬉しいと思ってる。


だったら私は倭が…



好き、なのか。分からない。それでもあっという間に昨日のイラつきはおさまった。

恥ずかしいと、嬉しいという気持ちが勝ってしまって。



私が穂高を好きだと、勘違いしてる倭…。

今日の夜、倭の家に行こうと思った。

行って、仲直りしようと。


それで、言ってみよう。

「倭って私のこと好きなの?」って。

それでもし、肯定が返ってきて嬉しかったら、私は倭を好きなんだって分かるから。







そう思ってその日の放課後、倭の家に行っても倭は帰ってこなくて、会うことが出来なかった。


だったら学校の中で捕まえようとしても、倭はいない。穂高に聞いても倭は来てないと言われ。


倭に電話をしてみた。

それでも倭は出てくれない。

どう考えても私を避けてる倭…。





「穂高」


不良グループで廊下に座り喋っている穂高を見つけ、声をかけた。もちろんそこに倭はいない。

穂高は少し面倒くさそうに腰をあげると、私に近づいてくる。



「なに?」



その時、その不良グループのひとりが、私と穂高のことを見ていた。



「倭来てない?」


「来てねぇよ」


「もし来たら、話があるって伝言お願いしたいんだけど…」


「無理じゃね、もうつるんでないし」



つるんでない?

え?

もう友達じゃないってこと?



「どうして?」


「めんどくせぇことになってるから?」



面倒臭いことになってるから?

え?

どういうこと?と首を傾げた。

面倒臭いことって何?

倭に関係あるの?



「倭ももう、俺とつるみたくないだろ」



つるみたくないって。

だけど、それは勘違いで仲が悪くなっているのに?



「そんなの…」


「まあ、そういう事だから。倭のことはもう俺に聞くな」


「…でも」


「マジでめんどくせぇんだよ、お前ら」




そう言う穂高の顔は、爽やかなのにどこか不機嫌だった。その不機嫌な理由は、分からなかった。


それでも後日、知ることになる。




「なんか、穂高と、安藤。すごく喧嘩してるみたいだよ?」



と、若葉が言ったのが始まりだった。

実際のところ、若葉にはもう言っていた。倭が私のことを好きで勘違いして、穂高に嫉妬し苛立っていると。

若葉も倭が私のことを好きだと知っていたようで。たぶん、知らなかったの奏乃ぐらいだよ?って言われた。



「…私のことで…?」


「うん、なんか、奏乃関係なんだけど。安藤ってほんと奏乃のこと小学校から好きでさ。周りの友達?みんな応援してたの」


「…」


「けど、奏乃は穂高?と仲良くなって。なんか、エリ先輩のことも結構広まってるらしい。穂高が助けたって。まあ簡単に言うなら、安藤と同小のやつらが、安藤の好きな子取んなよ!って怒ってるみたいな?」


「なにそれ…」


「だけど、それは違うだろって、元々はエリ先輩が悪いからって、穂高の援護してるのが、穂高と同小の男たちで…」


「…」


「今、穂高派と、安藤派に別れて喧嘩してるみたいだよ?」




若葉の話を聞きながら、数日前の穂高の〝めんどくせぇことになってるから?〟っていうセリフを思い出していた。

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