第9話
穂高とエリ先輩がいるところは度々見かけるようになった。エリ先輩が穂高の腕に手を回し、一緒に歩いてたりしてる。仲睦まじいその姿。
爽やかに微笑んでいる穂高を見ていると、〝ほんとうに好きになったのだろうか?〟と思うようになってきた。
エリ先輩が、部活に来なくなった。
それは1週間に2.3回の程度。
なんでも、3年生が言うには「彼氏と遊んでるっぽい。舐めてる」との事で。凄く凄く怒っていた。
2年生も「さすがにサボって、男とるのはねぇ?」と悪口を言っていた。
久しぶりに部活に来たエリ先輩が、「だってもっと会いたいって、言ってくるんだもん仕方ないじゃん。行こうとしてるんだよ?でもまだキスしたいって離してくれなくて」とそれを言ってるのを聞いた。
エリ先輩のいないところでは「エリ、なんかムカつく」と、陰口が多くなり。
友達だったはずの私を虐めていた2年の先輩達は、エリ先輩に苛立つようになっていた。
夏休みに入る前、エリ先輩は部活をやめた。なんでも顧問に注意されたとか。穂高に「部活やめて俺とずっと一緒にいよ?」とか言われたとかなんとか。
この辺りは2年生の会話を盗み聞きしたりとか、若葉に聞いたことだから本当か分からないけど。
──…エリ先輩が、テニス部をやめて3日もたってない頃、エリ先輩は穂高と別れたらしい。
なんでも一方的に、穂高が別れを切り出したらしく。
すっごい泣いてるらしいよ?ざまあみろと若葉は笑ってた。
実際のところ、私もその修羅場を見た事がある。「なんでなんで」と泣いて穂高の服を掴んでいたエリ先輩の姿を。
そんな穂高は、エリ先輩をまるで虫を見るような冷たい目をしていた。
倭に、聞いてた。「どうして穂高が、エリ先輩と別れたか知ってる?」って。
倭は「知るかよ」って、少し冷たく私に言ってきた。
穂高と別れたエリ先輩はテニス部に戻ろうとしたけど、「いや、無理でしょ。今更?」と部員達は聞く耳を持たなかった。
孤立してしまったエリ先輩に、誰も味方につく人はいなく。
これが全て穂高の思惑ならば。
廊下1人で歩いている穂高を見つけ、声をかけた。
穂高は「なんだよ」とエリ先輩を見てた虫けらみたいな目とは違う目で、私を見る。
「これが穂高の考えてたこと?」
「さあ?」
「エリ先輩…今、2年生で虐められるって…」
「それが?」
それがって…。
ぜんぶ、私の…。
私を苛められないために…。
「自業自得だろ」
「でも、これは流石に…」
「やりすぎって?」
「穂高」
「逆に甘いだろ、本気だすなら廻すかなんかするわ」
「廻すって…」
「お前がしたこと、思い知れってな」
爽やかに笑った穂高は、もう話は終わりだと言うふうにその場から離れていく。
私はその日、倭に電話をかけた。倭の家に行くと言った私に「…別にいいけど」と答えた倭。
倭の部屋に入り聞いてみる。
「穂高ってどんなやつ?」って。
見るからに眉を寄せた倭は、「……どんなやつ、って…」と、床に座り、ベットに座っている倭の姿を見ていた。
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