第3話

中学に入って変わった事と言えば、部活動に入ったことだった。ちなみに軟式テニス部。

1年生はボール拾いや体力作りがメインで。



月水金は、朝練。

それから授業を受けて、放課後また部活。

勉強もちゃんとしてるし、友達もいる。

至って普通の生徒だったと思う。







「あ、安藤あんどうたちだ」


体育の時、またいつもの5人組で授業をサボっているのを見かけた。全く授業を受けない彼ら。そんな彼らは花壇のところに座り楽しそうに喋っていた。



安藤という名字にぴく、っと反応してしまうのはたぶん、倭の名字が安藤だからだと思う。



「先生、注意しないのかな?」



横にいる友達の若葉わかばが私に向かってそう言ってきて。「注意されないなら私もサボりたいなあ」とへらっと笑いながら運動場へと向かう。



「だね」


と、私も笑った。

でも言うだけ。実際はサボることはしない。



「最近、安藤と話すの?」



お団子頭の若葉は、私と倭と同じ小学校だったから、私と倭との関係を知っていた。



「ううん、あんまり。部活とかでもう一緒に帰るとか無いし」


「なんかまさかだった、安藤があっち側に入るとか」


「そうかな?」


「だって小学校の時は黒じゃん?いきなり金髪って…全然見慣れなかったもん」



それは私もだけど。

実際、金髪似合わないとか思ってたりするけど。小学生の時から煙草を吸っていた倭…。

不良という、グループにはなるだろうなとは、少しだけ思っていたからそれほど驚く事は無かった。


というよりも、中身は昔と変わんないし…と。



「奏乃、ビシッと言ってやったら?不良なんかやめろ!って」


「私が?」


「だって仲良いじゃん、ってか、安藤ってどう考えても…」



何かを考えている様子で若葉がそういった時だった。後ろから「原田はらだって、安藤と仲いいの?」と、男の声が聞こえて。


振り向けば、違う小学校から来た同じクラスの男子生徒がいて。体操服を着て同じく運動場に向かっているらしい彼は、少しだけ興味津々に私に話しかけてきた。


目の下にあるホクロが、印象的な男。


正直、まだクラス全員の名前は覚えていなく…。名前なんだっけ?と思いながら、「…うん、普通…?」と、返事をした。



「普通って?」



普通?

だから普通に幼なじみ、って、答えようとした時だった。







──「奏乃!」


と、少しだけ離れた花壇の方から、聞きなれた声がして。さっきまで5人組でワイワイ楽しそうに喋っていたくせに、会話をやめ私の方に顔を向けている倭がいた。



私の名前を呼んだ倭の方に、いきなり何?と顔を向けていると、「授業おくれるぞ、走れデブ」と、少し大きめの声で言ってきて。




普通に間に合う時間だし、デブって…。


それにはあ?と顔を顰めた私は、「倭こそサボんな!」と大声を出した。

私にデブと言った倭は、怒った顔をする私を見て少しだけ笑っていた。



ほんとなに?



そう思っていると、また私から視線を外しワイワイと会話をしだして。



「なにあれ、むかつくっ」



私がそう言うと「ふっ…」と鼻で笑った若葉。



「やっぱ変わんないわ、小学生の時から安藤は」


「結構仲良いんだなー」



名前も知らない同じクラスの男子生徒も、少しだけ眉を下げて笑っていた。

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