第87話

「いた⋯、‘あの時’、いた⋯」


「あの時って⋯」


「いた⋯あの声⋯いた⋯!」



忘れるはずがない⋯。



「いたっ、絶対っ、さっきの、男っ、⋯あいつらの中にいた!!」



私が叫ぶと、蛍は一瞬、間を開けて。



「あいつら⋯?今、あいつらって言ったか? 湖都を襲ったのは1人じゃねぇのか!?」



低く大きな声を出した蛍は、私の体を離すと、私の顔を覗き込んできて。


戸惑っている顔。

怒っているような顔をする蛍は、「ま、わされ⋯たのか?」と、呟き。



否定しない私は、「ひっ、く⋯」と、ポロポロと涙が止まらなく。



「あいつ、お前を廻したのか?さっきの男?」



恐ろしいぐらいに低い声を出した蛍は、顔を顰めて。



「⋯ぶっ殺す⋯⋯」



そう言った直後、目の色を変えた蛍は、スマホをズボンの中から取り出し。



私を胸元に抱き寄せた蛍は、どこかに電話を仕出して。

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