第86話

バイクに乗り、家へと帰宅した私を、蛍が連れていく。蛍は品の入った袋をテーブルの上に置くと、黙り込んだままの私を、引き寄せ。


―――ギシッと、乗りなれたベットへと、2人で座り。




まだ、震えが止まらない私は、抱きしめられる蛍の腕の中で泣きそうになっていた。



「ごめん、ごめんな。もっと気ぃつければ良かった、ごめんな⋯」



多分、蛍は男が私に近づいたから、震えていると思ってる。


ううん、そうなんだけど、

それもあるけどっ⋯⋯。




「あ、あの、あの人の、こ、え⋯」


「声?」


「き、いた⋯こと⋯ある⋯」


「⋯え?」



背中がゾワっと、悪寒が走った。


あんなの、今まで無かった。



無かった、のに―――⋯。



私は、あの人を、知っている。

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