第88話

「―――てめぇ、気づいてたな」



電話越しに、低い声を出す蛍。多分、蛍はさっきの男に電話をしてるんだと思った。



「他は誰だ!! 言え!! ぶっ殺す!!」



蛍⋯っ、



「⋯⋯あ!? ―――何?」


「ふざけたこと言ってんじゃねぇぞ!!」


「―――ンなわけ、あるか!!」




「―――ありえねぇ、何、言ってんだお前⋯ 」




一瞬、蛍の息を呑む音が、聞こえ。





『別れた方がいいぞー、その女と。最悪、お前ら殺されっかもな』



最後の最後に、私の耳にも、悪寒が走る声が聞こえ。何も言わなくなった蛍は、力尽きたように、スマホを耳から離し。




「―――⋯ほたる⋯?」


蛍を見あげれば、今まで見たことの無いほどの、困惑した顔つきの、彼がいて。

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