第82話

「禁欲⋯」



あの言い方で伝わったらしい蛍は、大袈裟に項垂れて。

こんな事を簡単に言い合えるようになるまで、私達の関係は深くなった。





「ごめんね?」


「つーか、いいなあ、夏休み。俺も、休みてぇ」


「仕事、頑張って」


「いつでもいいからさ、泊まりで来いよ」


「うん、お母さん達に言ってみる」




蛍は絶対に、夕方には私を家まで帰してくれた。夜が怖いという私を、絶対に連れ回したりしなかった。



泊まるという事は、夜、蛍の家で過ごすという事。



お母さんに言えば、きっといいよって言ってくれると思った。本当に、蛍の事をすごく良く思っているから。



「腹へったなあ、ハンバーガー食いてぇ」


「行く?」


「勉強は?」


「後でするから、大丈夫」


「持ち帰りして、家で食べよ」


「うん」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る