第74話

「⋯蛍」


「うん」


「⋯す、き⋯」


「俺も」


「ほんとに、気持ち悪くない?」


「気持ち悪くねぇ」


「ほんと⋯?」


「本当」


「⋯⋯っ⋯」



うっと、涙が込み上げてくる。

抱き寄せてくる蛍の服が、涙で濡れていく。



「ほ、たる⋯」


「ん?」



優しい蛍の声が、響く。



「抱いて、ほし⋯」




抱いて欲しい。


そういう行為が怖くて怖くてたまらない。

本当なら、一生したくないと思うほど、体を重ねるのが怖い。



蛍の腕の中で呟いた直後、蛍は「無理だ」と苦しそうに声を漏らす。

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