第72話
「⋯蛍、私とシたい?」
私は蛍の腕の中で、呟く。
「うん」
即答する蛍の背中を、抱きしめる。
分かってる。
恋人同士なんだから。
こういう機会が必ず来るって、分かってた。
「蛍、あのね」
「うん」
「私、知らない人に、イタズラされたの」
ふと、蛍の体の動きが、止まった気がして。
「⋯うん」
返事をくれた蛍の声が、とても低く。
「蛍も、ある程度分かってたでしょ?」
「⋯」
「蛍、あのね⋯」
「聞いてもいいか?」
「うん⋯」
もう、蛍に内緒事はしたくないから。
もし、犯された私を気持ち悪いと思うのなら、
それまでのことだから⋯。
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